研究領域 | パレオアジア文化史学ーアジア新人文化形成プロセスの総合的研究 |
研究課題/領域番号 |
16H06410
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
北川 浩之 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (00234245)
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研究分担者 |
藤木 利之 岡山理科大学, 理学部, 准教授 (10377997)
田村 亨 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (10392630)
長谷川 精 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 講師 (80551605)
近藤 康久 総合地球環境学研究所, 研究基盤国際センター, 准教授 (90599226)
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研究期間 (年度) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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キーワード | パレオアジア / ホモ・サピエンス / 気候変動 / 居住環境 / 環境適応 |
研究実績の概要 |
約20万年前頃のアフリカ大陸で誕生したホモ・サピエンス(現生人類)は、10~5万年前頃以降、ユーラシア各地の多様な環境に適応しつつ拡散し、先住者たる旧人たちと交替した。新学術領域「パレオアジア文化史学 - アジア新人文化形成プロセスの総合的研究-」(パレオアジア文化史学)の計画研究A03「アジアにおけるホモ・サピエンス定着期の気候変動と居住環境の解明」では、新人がアジアに拡散し定着した時代の気候・環境に関わる各種拠を多面的に解析し、アジア各地の新人の居住環境や生活様式(生活の痕跡)を探り、考古学的・人類学的な証拠と関連づけることで、新人文化の形成過程の解明を目指す。 平成30年度は、領域内の他の計画研究や現地研究者と連携して、モンゴル・オマーン・インド・パキスタンでの考古・古環境研究を目的とした調査を実施した。今年度は重点的にアジアへの現生人類の拡散のヒマラヤ以北ルートのモンゴルの湖沼堆積物の採集および堆積学・鉱物学・地球化学分析・古植生解析を実施した。その研究成果は、2018年度研究報告書に取りまとめた。アラビア半島における現生人類の定着について検討するために、第三次オマーンで考古・古環境研究を目的とした現地調査および編年学的研究を実施した。アジア各地の考古・古環境データを融合し、アジアにおけるホモ・サピエンス定着期の気候変動と居住環境の解明するために、アジア各地の気候の類似性の定量的な扱い、エージェント・ベース・モデルを使ったホモ・サピエンスのアジアへの拡散モデルの開発を進めた。これらの研究成果に関しては、パレオアジア文化史学の研究大会や2018年度研究報告書で公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新学術領域研究「パレオアジア文化史学」の計画研究A03「アジアにおけるホモ・サピエンス定着期の気候変動と居住環境の解明」では、アジア各地の現地研究者と連携した考古・古環境調査の実施を計画した。モンゴル科学アカデミー古生物・地質研究所のNiiden Ichinnorov上級研究員らと連携し、当初計画していたモンゴルの湖沼堆積物の採集を完了した。次年度以降に採集した堆積物資料の各種分析を行うことで、北東アジアの気候変動や現生人類が定着した時代の居住環境の詳細が可能となると考えられる。また、オマーン遺産文化省考古博物館らと協力したオマーン内陸部の予備調査を終え、次年度に本格的な調査を行う準備が整った。The Japan-Spain-Pakistan Archaeological Research Initiativeの枠組みで勧めた日本-スペイン-パキスタン考古学共同調査は、多数の研究者が参加し、a) 古環境研究、b) 考古学、c) 民族考古学(エスのアーケオロジー)などの研究が進展した。また、現生人類の東・東南アジアへの拡散に重要なカシミールでの考古学・古環境調査を開始することができた。その他、イスラエル・ヘブライ大学Moti Stein教授らとの連携したレバント地方の古環境研究、ベトナム科学技術アカデミーのPhong Dan Xuan准教授らと連携したベトナム中部高原地帯・沿岸部における古環境研究が格段に進んだ。これらの研究成果の専門誌等への公表が少し遅れ気味であるが、今後、多くの学術論文の公表が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
1.平成28年度から30年度の3年間で、アジア各地で(イスラエル・オマーン・パキスタン・インド・ベトナム・モンゴル)、現地研究者と連携した現地調査・研究体制が整った。今後は、現地調査を継続するとともに、過去3年間の現地調査で採集した試料の分析、データの解析に力点をシフトさせる。また、計画研究A03「アジアにおけるホモ・サピエンス定着期の気候変動と居住環境の解明」のゴールに向けた、研究集会の開催や論文や著作として成果の公表を進める。また、海外の研究協力者等と協力して研究成果を総括し、出版計画の企画を始める。 2.考古学的の情報が蓄積されている東地中海地域レバントやアラビア半島、パキスタン内陸部などの乾燥地域では過去の環境を探る方法が限られている。今年度まで検討を進めてきた、ジプサムの水和水の酸素・水素同位体比や植物珪酸体の酸素同位体比などに注目した最新の研究手法を導入し、現生人類が定着した時代の乾燥地帯の水文学的状態につて定量的に復元する。 3.考古学・古環境でデータを有機的に結びつけ、環境因子を制約条件とした現生人類のアジアへの拡散モデルの開発を進める。
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