研究領域 | パレオアジア文化史学ーアジア新人文化形成プロセスの総合的研究 |
研究課題/領域番号 |
16H06411
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
野林 厚志 国立民族学博物館, 学術資源研究開発センター, 教授 (10290925)
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研究分担者 |
池谷 和信 国立民族学博物館, 人類文明誌研究部, 教授 (10211723)
上羽 陽子 国立民族学博物館, 人類文明誌研究部, 准教授 (10510406)
藤本 透子 国立民族学博物館, 人類文明誌研究部, 准教授 (10582653)
山中 由里子 国立民族学博物館, 学術資源研究開発センター, 准教授 (20251390)
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研究期間 (年度) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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キーワード | 物質文化 / 狩猟採集社会 / 生態資源 / 技術 / 世界観 / 新人文化 / 文化多様性 / 社会関係 |
研究実績の概要 |
当初の研究計画にもとづき、(1)計画研究班全体で進める課題として、生態資源の獲得技術、道具の生産様式とい ったパレオアジア文化史における新人文化の鍵要素を民族誌データから抽出することを進めた。具体的には研究代表者らが所属する国立民族学博物館において、研究資料(狩猟具、運搬具)の実見会を実施し、世界的な分布や系統性の調査、議論を進めた。また、B02(数理モデル)班と共同で、1980年代に集積された東南アジア諸民族の文化要素のデータを再検討し、ベイズ推定理論等を活用した現在の統計理論にもとづく分析とその文化人類学的解釈を行った。これらの成果はB02班主催の国際ワークショップ、領域主催の研究大会で発表している。 また、 (2)研究分担者、連携研究者が専門性を活かした課題への主な取り組みとしては、1)東南アジア諸地域(タイ、フィリピン、マレーシア)において、狩猟採集社会における生態資源獲得について、2)南・東南アジアの境界領域において、編製品を中心とする生産技術の発生のメカニズムを、3)中央アジアにおいて、居住空間、墓制・信仰と生態環境との相関性を、現地調査によって検証した。また、4)人間の象徴行動の系統的変化を図象の通文化的比較によって検証した。これらの成果については主として領域主催の研究大会での速報的発表を行っている。 情報環境の構築は、研究代表者の所属機関で整備しているデータベース環境を活用し、フィ ールド調査の各種データと博物館資料を統合する技術面(入力システム)とソフト面(メタデータ設定)について、研究代表者が連携研究者、プロジェクト研究員と検討を進めた。 主催班として領域全体の研究大会(5月)を実施した。また、国内外の学際交流の活動として、フランスのミュゼ・ド・ロム(人類博物館) より狩猟採集民研究の第一人者を招聘し、人類集団の移動と生態学的適応に関する講演と討論を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は領域全体の研究が開始してから2年目であり、アジアにおける生物学的な人類進化と文化の変化、変容との関係について、その全体像から先史考古学や古環境学で議論されてきた各論にいたるまで、当該研究班の研究分担者、連携研究者の理解が進み、文化人類学的な専門性を領域の問題意識に引きつけていく現地調査の立案、実施ができた。 また、これまで蓄積されてきた民族誌資料を現代の精度で統計推定分析を実施した研究(B01+B02)、食料資源加工の考古学的証拠と民族誌情報との比較対照(B01+A02)、文化の概念に関する統合的理解へむけた研究(B01+A03)等、公募研究代表者も含めた本研究計画班の班員と領域内の他班の研究者との共同研究が具体的に開始された点について、本計画班が「パレオアジア文化史」という領域研究として進められている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に開始した他班との共同研究を発展的に進め、他の課題についても共同研究の可能性を探る。そのための合同研究会等を実施していく予定である。また、これまでの研究成果の公開は、主に領域主催もしくは領域関連の国際集会等で実施してきたが、今後はより広く研究成果の公開を進める。具体的には国内外における学会等で、領域の課題に即した分科会、パネルの組織、参加を進める。すでに次年度開催の国内学会(考古学協会年次大会)、国際会議(世界狩猟採集民会議)で、分科会、パネルが採択されており、領域としての成果の公開を行う。 研究分担者、研究協力者の現地調査は軌道に乗りつつあることから、領域の問題意識にひきつけた形で、生態環境、社会環境と文化変容との相関についての文化人類学的な知見を蓄積することを目指す。 民族誌資料のデータベース構築も継続して作業を進め、部分的な試験運用を次年度に実施するための調査を行う。
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