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2016 年度 実績報告書

人類集団の拡散と定着にともなう文化・行動変化の現象数理学的モデル構築

計画研究

研究領域パレオアジア文化史学ーアジア新人文化形成プロセスの総合的研究
研究課題/領域番号 16H06412
研究機関明治大学

研究代表者

若野 友一郎  明治大学, 総合数理学部, 専任准教授 (10376551)

研究分担者 小林 豊  高知工科大学, 経済・マネジメント学群, 准教授 (70517169)
高畑 尚之  総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 名誉教授 (30124217)
研究期間 (年度) 2016-06-30 – 2021-03-31
キーワード数理モデル / 文化進化 / 反応拡散系 / 集団遺伝学
研究実績の概要

若野・青木はテーマ1「個体数変化と文化変化の複合的影響」に取り組み、個体数仮説に基づく文化・個体密度変動を、空間構造を陽に記述した反応拡散方程式系でモデル化し、そのシミュレーションと数理解析を行った。その結果、高文化高密度状態にある人類集団が、低文化低密度状態にある集団と接触する場合、必ずしも前者が後者を駆逐するとは限らないことや、生態学的な種間競争係数が高いときには、生物種として後者は絶滅においやられること(交替シナリオ)、種間競争係数があまり高くないときには、生物種としての共存が起きること(同化吸収シナリオ)を解明した。このことは、仮に新人のアジアへの進出とそれにともなう旧人の絶滅の過程において、新人のアジアへの進出が、ただちに人類の密度増加と文化の発展(たとえば中期後期旧石器)を伴ったのではなく、文化的には同程度のレベルにある新人集団と旧人集団が一時的に共存したあと、新人の密度増加と文化の発展によって旧人が絶滅した可能性を示唆している。この理論研究は現在論文投稿中である。
高畑はテーマ4「欧米を中心とするゲノム生物学の最新動向調査」を精力的に行い、新人旧人間の混血や系統樹、過去の有効集団推定などに関連して2016年に発表された複数の重大な論文を精読し、プロジェクト全体にむけて紹介した。
小林・若野はテーマ2「文化の多様性の創出維持機構」に取り組み、とくに多次元ベクトルモデルにおいて2個体以上の個体から社会学習を行うときの、文化のダイナミクスについて数理解析を行った。一つの重要な結論は、文化の古さの推定である。パレオアジア文化史学では、アジアの人類集団の文化的起源が、遺伝的起源と同一か異なるかが重要なテーマとなる。遺伝的起源については、テーマ4での調査からある程度具体的な数字が分かっているので、文化的起源の古さを、現在見られる文化の頻度分布から推定する手法を開発した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

テーマ1,2,4については、モデル構築、シミュレーション、数理解析が計画通り進展している。また、テーマ1においた開発したモデルに、種間の文化伝達パラメタを取り入れることで、テーマ3「集団接触による文化交流説と独自進化説」を研究するためのモデルの枠組みも作られつつある。テーマ5「文化伝達実験」は、この分野で先行する欧州から Mesoudi 博士を招聘し、高知工科大の施設を見学しながら、実験のセットアップについて具体的な意見交換が進んでいる。以上のことから、おおむね順調に進展しているといえる。

今後の研究の推進方策

テーマ1で若野・青木が開発した反応拡散系モデルは、新人のアジアへの進出とそれにともなう旧人の絶滅の過程において、単に優れた石器文化をもつ新人が、劣った文化しか持たない旧人を駆逐した、という仮説では説明しきれない複雑な遺伝子と文化のダイナミクスを予測する。このシナリオはレバントのデデリエ洞窟などにおいて見られる新人と旧人の共存や複数回の交替、共存期における新人と旧人の石器文化の質的な類似性などをうまく説明する可能性がある。そこで、数理モデルと考古学的知見およびデータを組み合わせた共同研究を、A02班の門脇らと遂行する。
2017年度は、新たに2名の研究協力者を雇用する。4月からの雇用1名は統計解析に精通した者で、B01班の提供する民族学データをテーマ2および3の立場から解釈し、B01-B02班間共同研究を推進する。10月からの雇用1名は数理解析に精通した者で、テーマ1,2,3におけるモデル構築およびその数理解析を担当する予定である。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] スタンフォード大学/ハーバード大学(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      スタンフォード大学/ハーバード大学
  • [国際共同研究] ローザンヌ大学(スイス)

    • 国名
      スイス
    • 外国機関名
      ローザンヌ大学
  • [国際共同研究] ストックホルム大学(スウェーデン)

    • 国名
      スウェーデン
    • 外国機関名
      ストックホルム大学
  • [国際共同研究] エクセター大学(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      エクセター大学
  • [雑誌論文] The driving forces of cultural complexity: Neanderthals, Modern Humans, and the question of population size.2017

    • 著者名/発表者名
      Fogarty, L., J.Y. Wakano, M.W. Feldman, and K. Aoki
    • 雑誌名

      Human Nature

      巻: 28 ページ: 39-52

    • DOI

      10.1007/s12110-016-9275-6

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Population size vs. social connectedness ― A gene-culture coevolutionary approach to cumulative cultural evolution.2016

    • 著者名/発表者名
      Kobayashi, Y., H. Ohtsuki, and J.Y. Wakano
    • 雑誌名

      Theoretical Population Biology

      巻: 111 ページ: 87-95

    • DOI

      10.1016/j.tpb.2016.07.001

    • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [学会発表] “Risk conversion” hypothesis in human evolution2016

    • 著者名/発表者名
      Fujito, N., T. Hayakawa, N. Takahata, and Y. Satta
    • 学会等名
      International symposium on Evolutionary Genomics and Bioinformatics
    • 発表場所
      高雄(台湾)
    • 年月日
      2016-11-24 – 2016-11-25
    • 国際学会
  • [学会発表] 自然と人との共生(その2)―人類の誕生から農業革命まで2016

    • 著者名/発表者名
      高畑尚之
    • 学会等名
      教育自然学研究会第5回研究集会
    • 発表場所
      鎌倉婦人子供会館(神奈川県鎌倉市)
    • 年月日
      2016-10-30
  • [学会発表] 出アフリカと精神疾患:シアル酸転移酵素STXの低活性化による適応2016

    • 著者名/発表者名
      藤戸尚子・颯田葉子・羽根正弥・松井 淳・八島健太・北島 健・佐藤ちひろ・高畑尚之・早川敏之
    • 学会等名
      第88回日本遺伝学会
    • 発表場所
      日本大学(静岡県三島市)
    • 年月日
      2016-09-07 – 2016-09-09
  • [学会発表] 現生人類の世界拡散に伴う特異的な環境適応と疾病へのリスク転換2016

    • 著者名/発表者名
      颯田葉子・藤戸尚子・高畑尚之・早川敏之
    • 学会等名
      第88回日本遺伝学会シンポジウム『遺伝学から眺める将来の医学・医療』
    • 発表場所
      日本大学(静岡県三島市)
    • 年月日
      2016-09-07 – 2016-09-09
    • 招待講演
  • [学会発表] Traveling waves of cultural invasion2016

    • 著者名/発表者名
      Wakano, J.Y.
    • 学会等名
      Japanese Society for Mathematical Biology
    • 発表場所
      九州大学(福岡県福岡市)
    • 年月日
      2016-09-07 – 2016-09-09
  • [学会発表] Cognitive equivalence and bistability2016

    • 著者名/発表者名
      Aoki, K
    • 学会等名
      New Perspectives in Cultural Evolution Workshop
    • 発表場所
      Palo Alto, CA, USA
    • 年月日
      2016-07-21 – 2016-07-22
    • 国際学会
  • [図書] Gene-culture models for the evolution of altruistic teaching: On Human Nature: Biology, Psychology, Ethics, Politics, and Religion, edited by M. Tibayrenc and F.J. Ayala, pp. 279-2962016

    • 著者名/発表者名
      Aoki, K., J. Y. Wakano, and M. W. Feldman
    • 総ページ数
      814
    • 出版者
      Elsevier
  • [備考] パレオアジアプロジェクトB02班ホームページ

    • URL

      http://paleoasia.jp/research_projects/b02/

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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