研究領域 | 特異構造の結晶科学:完全性と不完全性の協奏で拓く新機能エレクトロニクス |
研究課題/領域番号 |
16H06414
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤岡 洋 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (50282570)
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研究分担者 |
徳本 有紀 東京大学, 生産技術研究所, 講師 (20546866)
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研究期間 (年度) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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キーワード | 特異構造 / 結晶工学 / 窒化物半導体 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、パルス励起堆積法と呼ばれる非平衡下での結晶成長の新手法を用いて、0次元から3次元までの任意の形状の特異構造を結晶中に形成する技術を開発することである。従来手法ではシャッターなどの機械的部品を用いて原料供給を制御していたため1原子層程度(1秒)の制御しかできなかったが、本計画研究代表者グループにおいて開発されたパルス励起堆積法を用いれば、高い励起(非平衡)状態にある原料の供給を電気的パルスによって1000万分の1原子層(100ナノ秒)の精度で制御できる。本研究では、このパルス励起堆積法を用いた非平衡状態の時間ドメイン制御と、自己組織化ボトムアップおよびトップダウンリソグラフィといった技術と組み合わせることによって、特異構造形成技術を開発する。 初年度の平成28年度は原料供給の変調という非平衡状態での結晶成長技術の開発に注力した。具体的には、現有のパルス励起堆積装置を改造することによって、特異構造導入に適したプラズマ変調技術を開発し、これにより、窒化物半導体薄膜内への高濃度特異点の導入が可能となった。この技術を用いて、Siドープn型GaN薄膜を作製したところ、従来手法であるMOCVD法では実現できないような高電子濃度試料を、移動度の劣化なく作製できることが見出され、電子濃度2E+20 /cm3において電子移動度110 cm2/Vsという値が得られた。この高電子濃度GaN薄膜の比抵抗は、透明導電膜材料であるITOに匹敵し、窒化物デバイスにおける低抵抗なエピタキシャル透明電極としての利用が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は本研究の初年度であり、特異構造作製用の装置構築に注力することを主眼としていたが、順調に装置構築が進んだだけでなく、特異構造導入による新現象を見出すことができた。そのため、当初の計画以上に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度(H28年度)で開発した非平衡結晶成長技術を、自己組織化ボトムアップ技術やトップダウン技術と融合する。ボトムアップ技術では、表面エネルギーやステップ間相互作用エネルギーなど自然の持つ力を利用して、化学的・熱的な処理によって原子ステップやキンクの位置および密度の制御を行い、任意の特異構造を導入するために適した表面形状を利用する。トップダウン技術では、微細加工技術を駆使してナノ構造を形成し、この構造と非平衡成長技術と組み合わせることによってエッジ部などに特異構造を導入していく。
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