研究領域 | 特異構造の結晶科学:完全性と不完全性の協奏で拓く新機能エレクトロニクス |
研究課題/領域番号 |
16H06416
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
上山 智 名城大学, 理工学部, 教授 (10340291)
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研究分担者 |
竹内 哲也 名城大学, 理工学部, 教授 (10583817)
岩谷 素顕 名城大学, 理工学部, 准教授 (40367735)
本田 善央 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 准教授 (60362274)
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研究期間 (年度) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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キーワード | 窒化物半導体 / SiC / 特異構造 / ナノ構造 / 量子効果 / 結晶成長 / 半導体発光デバイス / 不純物 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,本研究グループがこれまで開拓してきた窒化物半導体によるマルチスケール特異構造の作製機構を理解し学問的に発展させ、さらには新機能デ バイスの創出を目指す。 現在、窒化物系量子殻・ナノワイヤ結晶の作製と成長機構、サブナノスケールのポーラスSiC結晶の作製と不純物レベル間の光物性評価、X線その場観 察を利用したヘテロ接合形成時の界面特異構造の形成機構解明、GaN基板内のグロースピット等、多次元かつマルチスケールの特異構造の作製とその形成メカニズ ムの解明、また光物性制御に関する研究を推進中である。 現在までに、GaNナノワイヤにおいて、高い再現性で形状制御が可能となり、2018年度には、ナノワイヤ上にGaInN量子殻、p-GaN殻の成長が可能となった。GaInN量子殻は、上部r面からの面間拡散の抑制が課題であったが、ナノワイヤのr面面積を極限まで縮小することにより、面間拡散を抑制し、組成、膜厚の均一性が高められることがわかってきた。一方、p-GaN殻成長においては、一般的な成長条件では、量子殻先端部にp-GaNがほとんど成長せず、デバイス応用が困難であったが、V/III比を適度に低下させると先端部の成長が促され、理想的な結晶形状を実現できるとがわかった。 X線その場観察においては、ヘテロ接合の成長時に、AlGaN/AlN系において、転位形成やマイクロクラックの生成機構の理解が深まった。ただし、成長条件によってそれらの欠陥の生成に変化を付与することができるかを明らかにする必要性を感じている。 その他、GaN基板上ホモ接合GaN成長で2017年度に得られた知見を基に、ピットの少ない高品質ホモエピタキシャルGaN層が実現でき、従来の仮説を裏付けることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究項目のひとつである窒化物系量子殻・ナノワイヤ結晶においては、結晶成長の安定性を維持でき、先端部の形状制御が可能となったことから、以降の量子殻、p-GaN殻等の結晶成長の理解が大幅に進んだ。それ以降の研究が順調に進み昨年度末には遅れを取り戻せたと考えら れる。多重量子殻成長時には、r面面積の小さいGaNナノワイヤではGa原子の面間拡散が抑制され、GaInNの組成、膜厚均一性が大幅に向上した。X線その場観察においては、AlGaN/AlNヘテロ接合の成長時に、適度のマイクロクラックの生成を利用して、格子緩和させるとAlGaN表面の平坦性が高められると同時に欠陥密度も低い状態が維持できることがわかった。これらも計画で期待していた成果であり、順調に推移していると考えられる。以上のように、多次元マルチスケール特異構造の作製や成長機構の理解が進み、デバイス応用への素地が完成しつつあることから、本研究は順調に推移していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度も引き続き、量子殻・ナノワイヤ特異構造(上山、竹内)、ポーラスSiC特異構造(上山)、X線その場観察によるヘテロ接合特異構造(岩谷)、GaN基 板上ホモ接合特異構造(本田)の研究を継続、発展させ、成長機構や物性の解明を推進する。量子殻・ナノワイヤ特異構造では、端面発光レーザの活性領域に量子殻を適用するための検討に着手する。その際には量子殻・ナノワイヤの均一配置ではなく、ストライプ領域に選択的に成長させる手法を導入し、これまでの結晶成長メカニズムの理解が有効であるかを実証しなければならないと考えている。2020年度にはレーザ発振を実現を目指す。さらに領域内共同研究として、三重大の結晶成長理論と実験の整合性に関しての研究も付加する予定である。X線その場観察によるヘテロ接合特異構造においては、これまで実現できた高品質AlGaN/AlNヘテロエピタキシャル層の深紫外デバイスへの応用を進め、深紫外レーザの発振を目指す。GaN基板上ホモ接合特異構造は、パワーデバイスの耐圧などに関する評価を行う。その他、昨年着手できなかったポーラス SiCの光学特性と不純物濃度の関係を検討する。 白色LEDの試作などにも適用して、その有用性を明らかにする。
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