研究領域 | 特異構造の結晶科学:完全性と不完全性の協奏で拓く新機能エレクトロニクス |
研究課題/領域番号 |
16H06417
|
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
熊谷 義直 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20313306)
|
研究分担者 |
村上 尚 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90401455)
|
研究期間 (年度) |
2016-06-30 – 2021-03-31
|
キーワード | Ⅲ族セスキ酸化物半導体 / 発現相制御 / 熱平衡成長 / 非熱平衡成長 / 安定相 / 準安定相 / 相混在 |
研究実績の概要 |
ハライド気相成長(HVPE)法による酸化ガリウム(Ga2O3)および酸化インジウム(In2O3)の成長炉を整備し、発現相の成長温度依存性を始めとした成長挙動解明を実施した。 Ga2O3成長では、Ⅲ族原料に一塩化ガリウム(GaCl)、Ⅵ族原料に酸素を用い、c面サファイア基板上に成長温度400~1000℃で成長を試みた。その結果、800℃以上では成長速度はほぼ一定となり成長は原料供給律速、すなわち熱平衡下成長となった。この時、成長層は安定相である(-201)面β相であった。一方、成長温度800℃未満では、成長温度の低下と同時に成長速度の低下が見られ、成長は表面反応律速、すなわち非熱平衡下成長となった。本温度域では成長温度の低下と同時にβ相に準安定相であるα相が混入し始め、成長温度525℃付近でα相の単一相の単結晶(0001)が得られた。光学吸収端測定により、準安定α相は安定なβ相の4.8 eVよりも大きな5.1 eV程度の禁制帯幅を有することを確認した。 In2O3成長では、Ⅲ族原料に一塩化インジウム(InCl)、Ⅵ族原料に酸素を用い、c面サファイア基板上に成長温度400~1000℃で成長を試みた。その結果、Ga2O3同様に成長温度800℃以上では成長速度が原料供給律速であり熱平衡下成長となり、それ以下の温度では成長温度の低下で成長速度が低下する表面反応律速成長、すなわち非熱平衡下成長となることを確認した。また、Ga2O3成長とは異なり、In2O3の成長では成長温度400~1000℃の温度域で安定相であるc相が成長し、高温で(111)配向が支配的、低温で(100)配向が支配的となることが分かった。現段階では1000℃成長において(111)配向成長膜が得られているが、面内で180°回転した双晶が含まれており、今後、c面サファイア基板のオフ角調整で単結晶化が期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Ⅲ族セスキ酸化物半導体結晶の熱平衡・非熱平衡成長の挙動解明による発現相混在面を利用した単結晶化、相整合混晶成長によるバンドエンジニアリングを目的とする本研究において、初年度の目的である酸化ガリウム(Ga2O3)および酸化インジウム(In2O3)の熱平衡下成長、非熱平衡下成長を達成する結晶成長炉の整備を終え、成長挙動の解明を終えている。
|
今後の研究の推進方策 |
酸化インジウム(In2O3)成長については、1000℃成長で平坦性の高い安定相c相の(111)成長層が得られることが分かったが、成長層には双晶が含まれている。そこで成長に用いているc面サファイア基板のオフ角を調整し、双晶の混入を排除して単結晶In2O3膜を得られるようにする。 酸化アルミニウム(Al2O3)のハライド気相成長実験を実施し、成長温度と発現相の相関を調査する。これにより、Ⅲ族セスキ酸化物半導体の熱平衡・非熱平衡成長挙動調査を一通り終わらせ、相混在面利用、相整合混晶の成長実験のための基礎データを完成させる。
|