計画研究
深紫外発光ダイオード(DUV-LED)・半導体レーザ(LD)、ならびにテラヘルツ量子カスケードレーザ(THz-QCL)などの新規波長発光デバイスは、殺菌・浄水、医療、生化学産業、高密度DVD、各種透視・非破壊検用の光源、環境計測など、幅広い分野への応用が考えられ、これらの開発はわが国の重要課題である。本研究では、特異構造結晶としてAlN結晶ピラー、短周期超格子ドープ層、原子層平坦多重超格子を開発し、これらの特異な物性を用いて、高濃度p型紫外コンタクト層、低貫通転移バッファー、LED高光取り出し構造、GaN系量子カスケード構造を実現する。これらの技術を用いて、DUV-LED、LD、THz-QCLの革新的新機能デバイスを実現することを目的とする。2019年度は、Al組成変調p-AlGaNを用いた分極ドープ高ホール濃度化を行い、それを用いたUVCLEDに於いて効率の改善を観測した。また、同構造の分極ドープ効果とUVCLDの特性解析を行い、分極効果で電流電圧特性は著しく向上し、高電流注入動作が可能となる事を解析から示した。GaN系QCLを実現するために、導波路及び基板構造の見直しを行った。これまで用いてきたサファイア基板は、C面に平行方向の屈折率はGaNよりも高いために、QCL構造への光閉じ込めが難しい事が分かった。GaNよりも低屈折率であるSiC及びAlN基板が適していることが分かった。そこで、SiC基板上へのAlN/AlGaNバッファーの成膜条件を検討し、貫通転位密度109cm-2程度でクラックが発生しない成膜条件の探索を行った。また、Si基板上にGaN系QCLのエピを行い、Si基板リフトオフプロセスを用いた両面金属導波路型GaN系THz-QCLの作製を行った。その結果、理論解析値と同様の電流-電圧特性が得られ、QCL構造が想定通り形成されていることが確かめられた。
2: おおむね順調に進展している
反射PhC構造を用いたUVCLEDの光取り出し効率(LEE)向上の実施は、ウェファーレベルでの原理実証が2018年に出来、現在、フリップチップ(FC)実装素子で高出力化を行っているところである。ここ2年で反射PhC形成プロセスとFC実装プロセスの立ち上げを独自に行い、最近、高出力チップの作製が可能になってきた。今後、LEE向上による高出力・高効率化の結果が待たれる。昨年、名古屋のグループから、最短波長272nmLDの報告があったが、本研究でも、分極ドープp型AlGaNの最適化とLED、LDへの適用に関して進めている。昨年は、シミュレーションによるUVCLED、LDへの最適構造解析を行い、一部LEDで特性改善が見られてきた。今年度はUVCLDの実現と高出力化に挑戦する予定である。GaN系QCLの研究では、これまで用いてきたサファイア基板は屈折率がC面に平行方向の屈折率が高いため光閉じ込め構造に使えないことが明らかになってきたため、基板の変更を余儀なくされている。AlN基板は光吸収があるため使えないため、SiC上の片面金属QCL、及び、Si基板リフトオフプロセスを用いた両面金属QCL形成が、GaN系QCLの候補として重要なことが分かった。前者は、エピに於いて転位密度の低減とクラックの防止が難しく、後者は、リフトオフプロセスと両面金属共振器の形成が難しく、それぞれ新たな課題が発生している。昨年は、これらの課題をおおむね解決してきたので、数値で評価される業績はなくとも順調に研究は進んでいると考えられる。最終年度では、これらの技術を精査して完成させることにより、GaN系QCLの発振動作が期待される。
本研究では、結晶の特異性を利用した結晶制御と発現される物性を用いて、高濃度p型AlGaN、極低転位AlNバッファー、紫外LED高光取り出し構造、高品質AlGaN多重超格子を実現し、これまでにない特性を有する特異構造結晶を実現する。それらの効果を用いて、高効率深紫外LED、深紫外LD、ならびに、GaN/AlGaNを用いた未踏波長QCLを実現し、革新的エレクトロニクスデバイスを創成することを目的としている。2020年度では、前年度までに引き続き、深紫外LED・LDの実現において重要性の高い、高濃度p型AlGaNの創成に注力する。昨年度までに、分極ドーピング効果p型AlGaNとそれを用いたUVCLED、LDの理論的検討を行ったので、最終年度はLEDの実現とLEDの高出力化を実現する予定である。また、昨年度までに進めてきた、反射PhCを用いたUVCLEDのLEE向上を用い、大幅な高出力化を目指す。また、GaN系QCLで重要であるGaN/AlGaN超格子からのバンド内遷移光利得の改善の検討とMEB成長による高品質作製、両面金属導波路の作製を行い、レーザー発振を実現する。
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すべて 雑誌論文 (12件) (うち査読あり 12件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (69件) (うち国際学会 36件、 招待講演 15件) 図書 (2件) 備考 (1件) 産業財産権 (6件) (うち外国 4件)
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