研究領域 | 特異構造の結晶科学:完全性と不完全性の協奏で拓く新機能エレクトロニクス |
研究課題/領域番号 |
16H06421
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
橋詰 保 北海道大学, 量子集積エレクトロニクス研究センター, 教授 (80149898)
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研究分担者 |
赤澤 正道 北海道大学, 量子集積エレクトロニクス研究センター, 准教授 (30212400)
佐藤 威友 北海道大学, 量子集積エレクトロニクス研究センター, 准教授 (50343009)
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研究期間 (年度) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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キーワード | GaN / AlGaN / 異種接合 / 電子準位 / 周期的ナノチャネル / 電気化学エッチング |
研究実績の概要 |
種々の特異構造を内包するGaN系異種接合界面電気的評価を行い、化学的・構造的・光学的評価と連携させて電子捕獲準位の成因を理解し、混晶異種接合に立脚した新機能素子の実現に貢献する。さらに、極性制御ナノチャネル構造および微細孔構造を形成し、新機能トランジスタ・超低抵抗通電素子・ワイドレンジ光吸収素子に展開する。本年度の主な成果を以下にまとめる。
1)誘導結合プラズマ(ICP)ドライエッチングによりn-GaN表面を数100nmエッチングし、Al2O3膜を利用したMOS構造を作製することによって、GaN表面に導入される表面欠陥の評価を行った。容量―電圧(CV)測定結果に厳密数値計算を適用することで、伝導帯下端から0.1eVおよび0.6eVのエネルギー位置に比較的高密度の準位が検出された。これらの準位密度はバイアス電力に強く依存し、表面近傍(50nm以内)に局在することが明らかになった。また、900℃のアニールによって密度は低減するが、完全に回復させることはできなかった。 2)周期的ナノチャネルを有するAlGaN/GaN異種構造を用い、電界効果トランジスタを作製した。通常のプレーナー型トランジスタと比較して、ドレイン電流密度の増加と電流線形性の向上が観測された。3次元デバイスシミュレータによる解析により、ナノチャネル内部で電界強度が増強する可能性が示された。 3)パルス光照射電気化学プロセスを開発し、GaNおよびAlGaN表面のエッチングを行った。光ON状態で明瞭な電気化学的反応電流が観測され、光励起正孔が電解液/GaN界面に供給されて酸化反応が生じたことを示している。一方、光OFFの期間に酸化反応を一時的に停止させることで、均一な酸化膜形成が可能となった。形成した酸化膜をアルカリ溶液で除去することにより、平坦性に優れたエッチングを実現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)異種接合のCV解析による電子捕獲準位の評価、2)周期的ナノチャネルを有するトランジスタの作製と評価、3)電気化学プロセスによるGaNおよびAlGaN表面のエッチングを研究目標に置いた。 MOS構造の詳細CV解析により、ドライエッチングでGaN表面近傍に導入された電子捕獲準位を検出し、準位密度はバイアス電力に強く依存することと表面近傍(50nm以内)に局在することが明らかになった。次に、周期的ナノチャネルを持つAlGaN/GaN HEMTでドレイン電流密度の増加と電流線形性の向上が観測され、電界強度向上との関連性が示唆された。さらに、パルス光照射電気化学プロセスによりGaNおよびAlGaNのエッチングを行い、平坦性・低損傷性に優れた結果が得られ、プロセス誘起欠陥除去に展開可能であることが示された。以上より、予定の研究計画がおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の成果を踏まえ、今後は以下の方針で研究を行う。異種接合構造の電子準位評価では、1000℃以上の高温アニールを受けた表面層の解析を行う。電子準位の起源を明らかにするとともに、電極形成後の低温長時間アニールや低損傷電気化学プロセスを組み合わせた電子準位制御プロセスを開発する。また、無極性のm面GaNに接合を形成し、電気的特性を詳細に評価する。特に、MOSゲート構造を作製した場合、有極性のc面と無極性のm面で、界面準位密度分布、フラットバンド電圧安定性、温度安定性に違いが生じるかどうかに着目する。また、3次元デバイスシミュレータを用いて、ナノチャネル領域のポテンシャル分布、電界分布、および実効電子速度を計算し、実験結果と比較することにより、実験で得られた現象の機構解明を行う。
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