計画研究
c軸方向に反転対称性を持たない窒化物半導体特有の結晶構造を特異構造と捉え、同構造が誘起する圧電物性をナノビームX線回折(nanoXRD)によって評価・解析した。大型放射光施設SPring-8におけるパルスX線のポンプ‐プローブ法を駆使し、AlGaN/GaN系高電子移動度トランジスタ(HEMT)内のAlGaN層で生ずる逆圧電効果による格子変形挙動に着目した。今回は特に、ゲート・ドレイン電圧印加のトランジスタ動作下にある状態をオペランド計測し、動作中の各電圧・ドレイン電流プロファイルを同時取得することで、HEMTの電気特性と構造特性の相関を調査した。パルス幅1.8μsecおよび60 psecの放射光パルスX線回折により、ゲート電圧値依存のAlGaN格子歪を計測し、前者X線ではドレイン電圧印加条件(パルス/DC印加)依存ならびにゲート電極内位置依存のスタティック測定、後者超短パルスX線ではAlGaN格子歪変化のナノ秒オーダー時分割ダイナミクス測定に成功した。いずれの測定においても、HEMT動作下で流れるドレイン電流のうち、電圧印加開始時の過渡電流が格子変形に影響を及ぼすことが明らかになり、逆圧電効果のみならず、ジュール熱による体積膨張が現象に深く関与することが示唆された。一方、昨年度までに開発を完了させた、nanoXRDの3次元逆格子マッピング分析技術とPtワイヤプロファイラを用いた回折波選択による結晶性断層マッピング解析技術を、特異構造(ナノボイド)を含むAlN膜の3次元結晶構造評価に適用した。ここでは、ナノパターン加工サファイア基板上にスパッタ成長とface-to-faceアニールを組み合わせて作製されたAlN膜をテンプレートとしたMOVPE成長AlN膜において、ナノボイドが結晶の厚さ方向に依存する格子面傾斜や歪等の微細構造に及ぼす影響が定量的に明らかになった。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Applied Physics
巻: 128 ページ: 125110~125110
10.1063/5.0018336
日本結晶成長学会誌
巻: 47 ページ: n/a~
10.19009/jjacg.47-3-06