研究領域 | 特異構造の結晶科学:完全性と不完全性の協奏で拓く新機能エレクトロニクス |
研究課題/領域番号 |
16H06427
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
秩父 重英 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (80266907)
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研究分担者 |
小島 一信 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (30534250)
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研究期間 (年度) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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キーワード | 結晶工学 / 結晶成長 / フェムト秒電子銃 / 時間空間同時分解分光 |
研究実績の概要 |
特異構造の内部や、外部との界面における局所的な発光ダイナミクスを把握するには、当該構造を狙い打ちして時間分解分光を行う必要がある。走査型電子顕微鏡にフェムト秒レーザ励起パルス光電子銃を組み込んだ時間空間同時分解カソードルミネッセンス(STRCL)装置は、特異構造近傍の発光イメージングやダイナミクス解析が可能である上、電子線励起のためバンドギャップの制限を受けない。我々は、主にワイドバンドギャップ窒化物半導体特異構造の評価を行い、光物性解明と光機能性発現のための設計指針を与える事を目的として研究を行っている。 H29年度は大きく分けて4つの成果を得た。(1)STRCL装置の機能向上のため、金塊を光励起する際のレーザ集光系を刷新した。また、リターディング機構の検討を継続して行った。(2)新規特異構造材料評価:ウルツ鉱構造と異なりsp2混成軌道を基本とする2次元物質である六方晶窒化ボロン(h-BN)微粉末及びエピ層のSTRCL評価を行った。また、m面成長AlInN混晶ナノ構造の特異な発光メカニズムを明らかにし、A01-5寒川班と共同で周期構造発生メカニズムを明らかにした。更に、ワイドバンドギャップでp型伝導を呈するNiOとGaNのヘテロ接合界面の評価を行った。(3)人工形成特異構造:H28年度にA01-2三宅班により作製された組成変調AlGaN量子井戸の評価を行った。また、Mgイオン注入したGaNの光学的評価を開始し、アニールによる欠陥の動向をB01-2上殿班と共同で調べた。(4)次元性の制御された特異構造に関連する欠陥評価:上記Mg注入GaNに加え、無添加、Mg添加エピやGaN基板そのものにおける構造欠陥、面欠陥、線欠陥、点欠陥に関し、全方位フォトルミネッセンス(PL)やSTRCL、多光子励起PL(A02-17-2谷川班)や陽電子消滅(B01-2)評価により取り組みを始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成29年度には、研究実績の概要欄に記したように、交付申請書に記した実施計画は基より、新奇特異構造材料として、m面AlInNナノ構造体、2次元層状h-BN、さらにp-NiO/n-GaNという酸化物/窒化物半導体異種界面におけるGa2O3形成等の評価を行いつつ、前年から引き続き行っているAlGaN量子井戸の評価、Mg注入GaNの評価、更にはGaNの構造的な3次元、2次元、1次元及び0次元欠陥といえるボイドから点欠陥までの評価を行えている。領域内外との共同研究展開も活発に行えており、成果も論文・発表ともに発信している。
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今後の研究の推進方策 |
H30年度は、当初の予定どおりSTRCL装置の空間分解能向上の試みを継続する一方、H29年度に開始した新奇特異構造、人工形成特異構造、次元性の制御された特異構造欠陥における微細領域における発光ダイナミクス評価を継続する。静大原和彦教授グループや公募班との連携も深めて特異構造に起因する新たな物理現象の観測も行っていく。研究を阻害する課題は特にない。
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