計画研究
現在、フラビウイルス科ウイルスの進化機構として、(1)フラビウイルス科ウイルスの粒子産生に関わる宿主由来のアポリポ蛋白質とウイルス由来のErnsまたはNS1蛋白質の共通性に関する研究を行なっている。また、新たな持続感染機構の解明として(2)ペギウイルス感染機構の解明に関する研究を行なっている。1)C型肝炎ウイルス(HCV)及びペスチウイルスの粒子形成において宿主由来のアポリポ蛋白質とウイルス由来のNS1及びErnsが共通した機能を持つことを明らかにし、報告した(PLoS Pathogens 2017)。さらに、分泌蛋白質の機能解析を進めるツールとして様々なフラビウイルス科ウイルスにスプリットnLucレポーターを搭載したウイルス(HCV、ペスチウイルス、デングウイルス、日本脳炎ウイルス)を作出し、報告した(J Viriol 2018)。さらに、最近NS1の機能を欠損したフラビウイルスの作出に成功し、現在ウイルス複製またはウイルス粒子形成に関与するNS1の変異体としてI273Eを同定した。このNS1変異体はウイルスゲノムの複製は起きるものの、ウイルス粒子産生は認められないことから、NS1が粒子形成にも重要な役割を持つことが明らかになった。2)九州大学との共同研究によってペギウイルス陽性の臨床検体の収集を開始した。これまでに、肝臓移植後の患者ではペギウイルス陽性率が健常人と比べて明らかに高いことが明らかになった。また、ペギウイルス陽性末梢血単核球では非感染と比較してISGの発現が誘導されていることがRNA-seq解析から明らかになった。このことから、持続感染しているペギウイルスも症状は認めないものの、免疫応答に少なくとも影響を与えている可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
フラビウイルス科ウイルスの進化に関する研究に関しては、2017年と2018年に論文報告できており、現在も投稿準備中であることからも分かる通り、予定通りにおおむね順調に進展していると考えられる。ペギウイルス研究も新規知見が得られ、論文投稿準備中であり、順調に経過していると考えられる。
フラビウイルスの進化における分泌蛋白質の役割の保存性を検討する。特に、フラビウイルスの粒子形成におけるNS1の役割を宿主由来のアポリポ蛋白質や他のウイルス由来のErnsが代替できるかを検討する。また、ペギウイルスは持続感染していることが明らかになっているが、その免疫回避機構を明らかにする予定である。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (3件) 学会発表 (3件)
Journal of General Virology
巻: 99 ページ: 1643~1657
10.1099/jgv.0.001161
PLOS Pathogens
巻: 14 ページ: e1007299
10.1371/journal.ppat.1007299
Journal of Virology
巻: 92 ページ: e1582
10.1128/JVI.01582-17