計画研究
インフルエンザウイルスは、自然宿主であるカモなどの野生の水禽においては腸管内で増殖し、病気を発症することはない。長年にわたるインフルエンザウイルスと水禽の共生関係を考えると、本ウイルスが自然界において知られざる役割を有することは自明である。そこで本研究では、インフルエンザウイルスと水禽との共生が、水禽の腸内環境に与える影響を調べるため、腸内微生物叢のメタゲノム解析を行う。また、本ウイルスとの共生が、水禽の免疫系や生命活動に及ぼす影響を明らかにする。さらに、カモなどの水禽類のゲノムにおけるインフルエンザウイルス由来の遺伝子配列の網羅的検索を行う。インフルエンザウイルスとの共生が、水禽の腸内環境に与える影響を調べるため、腸内微生物叢のメタゲノム解析を行う。平成28年度は、北方から日本列島に渡り鳥が飛来する時期(10月~12月)に、国内3ヶ所の湖沼において、カモ類の糞便サンプルを採取した。北海道稚内市大沼において242個、宮城県伊豆沼・内沼において6個、鹿児島県出水市において189個の糞便サンプルが得られた。続いて、糞便サンプルからのDNA抽出方法の条件検討を行ったところ、糞便の性状や抽出キットが、DNAの収量やクオリティに影響を及ぼすことが分かった。もっとも条件の良い方法で、DNAを抽出したのち、選択したDNAサンプルのシークエンス解析を行った。 平成29年度には、得られたシークエンス情報を基に、カモの腸内細菌叢の解析を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、インフルエンザウイルスと水禽との共生が、水禽の腸内環境に与える影響を調べるため、腸内微生物叢のメタゲノム解析を行う。また、本ウイルスとの共生が、水禽の免疫系や生命活動に及ぼす影響を明らかにする。さらに、カモなどの水禽類のゲノムにおけるインフルエンザウイルス由来の遺伝子配列の網羅的検索を行う。平成28年度は、北方から日本列島に渡ってきたカモ類の糞便サンプルを採取し、腸内微生物叢のメタゲノム解析に着手した。解析に用いるサンプルの調整方法などを最適化することができたため、次年度からの解析をスムーズに行うことが可能となった。また一部のDNAサンプルを用いて、メタゲノム解析のための次世代シークエンスを行なった。以上の結果が得られたことから、本研究は、おおむね順調に進展していると考えられる。
今後も引き続き、水禽からのサンプリングを続けるとともに、平成28年度に採取した糞便サンプルを用いて、腸内微生物叢のメタゲノム解析を行う。インフルエンザウイルスを保有している個体と保有していない個体における腸内微生物叢の違いを調べる。また、それぞれの個体における、免疫系や代謝系などの生体機能の違いを調べるために、感染後の免疫応答などの宿主応答解析(トランスクリプトーム解析)や生体中の内因性代謝物を調べるメタボローム解析を行う。さらに、本ウイルスと水禽が遺伝子レベルで共存している可能性を模索するために、データベースから入手可能な数千種類の鳥インフルエンザウイルスの遺伝子配列データを用いて、カモなどの水禽類のゲノムにおける本ウイルス由来の遺伝子配列の網羅的検索に着手する。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 8件、 謝辞記載あり 7件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
mBio
巻: 7 ページ: e01248-16.
doi: 10.1128/mBio.01248-16.
Journal of Virology
巻: 91 ページ: e01716-16
10.1128/JVI.01716-16
巻: 91 ページ: e02215-16.
10.1128/JVI.02215-16.
EBioMedicine
巻: 17 ページ: 182-191
10.1016/j.ebiom.2017.03.007.
Scientific Reports
巻: 6 ページ: 38388
10.1038/srep38388.
Proc Natl Acad Sci U S A.
巻: 113 ページ: E8296-E8305
10.1073/pnas.1616530113
医学のあゆみ
巻: 260 ページ: 17034-17038
学会誌「ウイルス」
巻: 66 ページ: 155~162