計画研究
柱1:「ハダカウイルス(HadV1)の感染性dsRNAの分子解剖と宿主菌系統の確立」HadV1ゲノムdsRNAを感染Cryphonectria nitschkei (クリ枝枯病菌)JS13株から抽出し、の配列を決定した。HadV1が2つのORFをもち、下流のORF BがRNA依存RNA合成酵素を持つことを明かにした。分画遠心により得られたdsRNAを含む画分をトランスフェクションに用い、C. parasitica (クリ胴枯病菌)、C. nitschkei感染株を得た。単胞子分離法を用いてJS13からのウイルス除去(キュアリング)に成功した。得られた菌は、H29年度以降の生態系における役割の解明に用いる。柱2「ヤドカリ・ヤドヌシウイルスの宿借・宿主性の証明と宿主菌系統の確立」粒子トランスフェクション法によるYnV1単独感染株、混合感染株を作出した。YnV1には3つの変異型が確認されており、それぞれについて単独感染株、混合感染株を作製することに成功した。また、YnV1単独感染により宿主菌の表現型に影響はないが、YkV1との混合感染により生育速度が低下する傾向が認められた。しかし、これは宿主菌系統特異的であった。柱3「ネオ・ライフスタイルを持つウイルスの探索」HadV1と配列相同性を持つ配列がC. parasiticaからも見つかった。一方、YkV1/YnV1用の共生関係が成り立つであろうウイルス混合感染が昨年度他のグループから報告された(Osaki et al., 2016; Nerva et al., 2016)。これらのうち、Fusarium poae菌については、H29年度以降のネオ・ライフスタイルの証明・解析に用いる。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究計画に従って、研究が進んでいる。
柱1「ハダカウイルス(HadV1)の3者生態系における役割の解析」7) HadV1感染、非感染菌株でフェノーム(培地での菌糸生育、色素形成、酵素産生等)、トランスクリプトーム、small RNAnomeの解析を行い、ウイルス感染の糸状菌宿主への影響を調べる。柱2「ヤドカリ・ヤドヌシウイルスの4者生態系での役割の解析」9) YnV1、YkV1が織りなす相利共生関係について、YkV1感染性クローンを利用した逆遺伝学とYnV1トランスフェクション法を用いて詳細に解析する。特に、YkV1がコードする蛋白質が保有する2つのドメイン(RNA依存RNA合成酵素と2A-likeプロテアーゼ)の変異が与える影響について調べる。柱3「ネオ・ライフスタイルを持つウイルスの探索と生態学的役割の考察」(鈴木・近藤)13) インドネシア産およびバングラデシュ産植物感染性糸状菌の提供受け(1,000株を予定)、網羅的にウイルス探索を行う。一部は次世代シークエンサーでバイローム解析を進め、ネオ・ライフスタイルの生物界を跨いだ普遍性を明らかにする。また、YnV1、YkV1様ウイルスの単独感染株、混合感染株の検出頻度を比較し、ウイルス相利共生の生態学的役割をよりグローバルなレベルで考察可能とする。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Proceedings of the National Academy of Science, U S A
巻: 114 ページ: E1282-E1290
doi: 10.1073/pnas.1610212114
Journal of Virology
巻: 90 ページ: 11220-11230
10.1128/JVI.01013-16