計画研究
昨年度同様に以下の項目を進めた。柱1「ハダカウイルスの 3 者生態系における役割の解析」(鈴木)7) 新規ハダカウイルス2種(ポリマイコウイルスプロトタイプと配列類似性を示すHadV2, 3)感染したパキスタン産糸状菌2株からそれぞれウイルス非感染株を単胞子分離法により得た。感染、非感染菌株でフェノーム(培地での菌糸生育、色素形成、酵素産生等)解析を行なった結果、ウイルス感染の糸状菌宿主への影響がないことが示された。また、Fusarium oxysporumから分離されたハダカウイルス(HadV2)は、分画遠心法により通常のウイルス粒子を作成可能性が強く示唆された。 8) HadV1 感染、非感染菌株をクリ胴枯病菌の実験宿主であるリンゴでの植物上での生存適応能の差は認められなかった。 柱2「ヤドカリ・ヤドヌシウイルスの4者生態系での役割の解析」(鈴木)9) YkV1とYnV1混合感染とYnV1単独感染を比較すると、混合感染が日本産白紋羽病菌W567の生育をより低下させる傾向にあった。柱3「ネオ・ライフスタイルを持つウイルスの探索と生態学的役割の考察」(鈴木・近藤)13)バングラデシュ産植物感染性糸状菌(約500株)、パキスタン産植物感染性 糸状菌(約10株)、スペイン産植物感染性糸状菌(約80株)、英国産植物感染性糸状菌(約30株)から網羅的にウイルス探索を行った。新たに見つかったヤドカリウイルス、ネオ・ライフスタイルの解明を行うため、YkV4の2系統に対する感染性クローンの作成に成功した。 一方、上記パキスタン産ハダカウイルスのネオ・ライフスタイルは現在解析中である。
2: おおむね順調に進展している
昨年度の実績報告書、あるいは中間報告書に記載した通り、HadV1が裸性(dsRNAで感染性を示す)を持っていない可能性が高まった。そこで、パキスタン産の菌類から検出された裸性を持つ可能性が高い新規ウイルス(HadV2, HadV3)の性格づけにシフト(する)した。また、スペイン産白紋羽病菌から非常に興味深いYkV2, YkV3, YkV4を発見した。これらのウイルスの解析も、「糸状菌ウイルスのネオライフスタイル」の確立に大いに資すると考えた。実績の概要に記したように、HadV2については、通常のウイルス粒子を作成しないことを示唆するデータを得、それらが不顕性感染することを示した。。また、YkV4の2系統に対し、感染性クローンの作成に成功し、現在それらのパートナーの同定を進めている。以上のように、当初の研究計画に従って、研究が進んでいる。
昨年度に引き続き下記の計画を実施する。柱1「裸性を持つデあろうポリマイコウイルスの3者生態系における役割の解析」7)パキスタン産ポリマイコウイルス(HadV2, HadV3)感染、非感染菌株でフェノーム(培地での菌糸生育、色素形成、酵素産生等)、トランスクリプトーム、small RNAnome 解析を行い、ウイルス感染の糸状菌宿主への影響を調べる。 また、それらウイルスの感染性の実体を明らかにする。柱2「ヤドカリ・ヤドヌシウイルスの4者生態系dえの役割の解析」 9)YnV1、YkV1が織りなす相利共生関係について、YkV1感染性クローンを利用した逆遺伝学とYnV1トランスフェクション法を用いて詳細に解析す る。 10)7)同様にYnV1、YkV1単独感染、混合感染、非感染菌株でフェノーム(菌糸生育、色素形成、酵素産生、ウイルス蓄積量等)、トランスクリプトーム、small RNAnome解析を人工培地上で行い、ウイルス感染の糸状菌宿主への影響を調べる。柱3「ネオ・ライフスタイルを持つウイルスの探索と生態学的役割の考察」 13)スペイン産、フィリピン産およびバングラデシュ産植物感染性糸状菌の提供受け(1,000株を予定)、網羅的にウイルス探索を行う。一部は次世代シークエンサーでバイローム解析を進め、ネオ・ライフスタイルの生物界を跨いだ普遍性を明らかにする。また、YnV1、YkV1様ウイルスの単独感染株、 混合感染株の検出頻度を比較し、ウイルス相利共生の生態学的役割をよりグローバルなレベルで考察可能とする。
すべて 2019 2018 その他
すべて 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 11件、 査読あり 12件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 9件、 招待講演 7件) 備考 (2件)
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