研究領域 | ネオウイルス学:生命源流から超個体、そしてエコ・スフィアーへ |
研究課題/領域番号 |
16H06436
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
鈴木 信弘 岡山大学, 資源植物科学研究所, 教授 (70206514)
|
研究分担者 |
近藤 秀樹 岡山大学, 資源植物科学研究所, 准教授 (40263628)
|
研究期間 (年度) |
2016-06-30 – 2021-03-31
|
キーワード | ヤドヌシウイルス / ヤドカリウイルス / 菌類ウイルス / dsRNA / 白紋羽病菌 / ネオライフスタイル / 共生 |
研究実績の概要 |
柱1「裸性を持つであろうポリマイコウイルスの3者生態系における役割の解析」パキスタン産ポリマイコ様ウイルス(HadV1)感染、非感染菌株でフェノーム解析を行った。まず、極めてユニークなHadV1のゲノム配列を決定した。11本の(+)RNA分節を持つことが示され、ポリマイコウイルスに保存されている富PAS(プロリンーアラニンーセリン)タンパク質がHadV1には保存されていないことが判明した。次にHadV1感染Fusarium oxysporumから単胞子分離により、非感染株を複数得た。ウイルス感染株、非感染株を比較したが、ウイルスによる生物学的な性状への影響を観察することができなかった。また、ウイルス実態を調べるた結果、HadV1は、既報のポリマイコウイルスあるいはハイポウイルスとは分画パターンを示し、通常それらのウイルスが沈降する条件での超遠心では沈降しないことが明らかとなり、新規のライフスタイルを持つキャプシドレスウイルスと示唆された。 柱2「ヤドカリ・ヤドヌシウイルスの4者生態系での役割の解析」 では、YkV1感染性クローンを利用した逆遺伝学とYnV1トランスフェクション法を用いて詳細に解析した。その結果、YkV1の複製にはYkV1 RdRpが必須でそれがポリプロテインから切断されることが必須であることが示された。 柱3「ネオ・ライフスタイルを持つウイルスの探索と生態学的役割の考察」 では、スペイン産、フィリピン産およびバングラデシュ産植物感染性糸状菌の提供受け、網羅的にウイルス探索を行った。その結果、スペイン産からYkV1と配列類似性を示す複数のウイルス、YkV2, YkV3, YkV4a, YkV4bが見つかったが、YnV1と配列類似性を示すウイルスは見つからなかった。YkV4のパートナーはメガトティウイルスであるこが、示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新たにパキスタン産糸状菌から見出されたキャプシドレスRNAウイルスHadV1, Penicillium janthinellum polymycovirus 1の実態解明、生物学的影響の有無の解析も順調に進展した。日本産白紋羽病菌から見つかっていたYkV1/YnV1については、YkV1感染性クローンを用いた実験から「YkV1がYnV1キャプシドを利用して自律複製する」というコンセプトの証明につながった。すなわち、YkV1がコードするRNA依存RNA合成酵素 RdRpがYkV1の複製に必須であるということが示されたのである。スペイン産白紋羽病菌から分離されたYkV2, YkV3, YkV4は遺伝子構造もそれぞれ、またYkV1とも異なり、それらのパートナーシップの決定機構は興味深い課題である。パートナーの候補となるdsRNAウイルス、フザグラウイルス(RnFGV1)、メガトティウイルス(RnMTV1)、メガビルナウイルス(RnMBV3)の単独感染株を得た。YkV4のパートナーがメガトティウイルスであること、YkV3のパートナーがメガビルナウイルスらしいことを示す結果を得た。今後、これらパートナーシップ解析に用いられる。以上のように、当初の研究計画に従って、研究が進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
柱1「裸性を持つポリマイコウイルスの3者生態系における役割の解析」では、通常の他のウイルスで認められる粒子を作らないポリマイコ様ウイルス2種(HadV1, Penicillium janthinellum polymycovirus 1)パキスタン産糸状菌から分離された。これらの菌宿主での感染様式(水平伝搬、垂直伝搬)培養性状、菌の植物上での生存適応能(ヤドカリ・ヤドヌシウイルスの4者生態系での役割の解析」では、スペイン産白紋羽病菌から発見されたYkV2-4のパートナーを同定し、それらの4者生態系の役割を解明する。パートナーを同定した後には、日本産YkV1を含めスワッピング試験を行い、パートナーシップを明らかにする。 柱3「ネオ・ライフスタイルを持つピン産およびパキスタン産植物感染性糸状菌の提供受け(500株を予定)、網羅的にウイルス探索を行う。一部 は次世代シークエンサーでヴァイローム解析を進め、ネオ・ライフスタイルの生物界を跨いだ普遍性を明らかにする。また、YnV1、YkV1様ウイルスの単独感染株、混合感染株の検出頻度を比較し、ウイルス相利共生の生態学的役割をよりグローバルなレベルで考察可能とする。
|