研究領域 | 複合アニオン化合物の創製と新機能 |
研究課題/領域番号 |
16H06441
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
前田 和彦 東京工業大学, 理学院, 准教授 (40549234)
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研究分担者 |
長谷川 哲也 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (10189532)
田部 勢津久 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (20222119)
松石 聡 東京工業大学, 元素戦略研究センター, 准教授 (30452006)
牛山 浩 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (40302814)
内本 喜晴 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (50193909)
森 孝雄 国立研究開発法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他研究員 (90354430)
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研究期間 (年度) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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キーワード | 光触媒 / 二次電池活物質 / 誘電体 / 超伝導体 / 熱電材料 |
研究実績の概要 |
光触媒、光電極: TiO2:Ta/Nが優れた水の酸化光触媒となることを見出し、光電極系の構築にも成功した(前田)。さらには、実反応条件下での光触媒の姿を捉えるためのその場XAFS測定に関する予備的検討を済ませた(内本)。また、酸素をヘビードープしたTa3N5が超分子錯体光触媒との融合により新たなCO2還元光触媒となることを明らかとし、無ドープのTa3N5を用いた系と比べて4倍の高活性を実現した。この材料に関する理論計算を行い、Ta3N5への酸素ドープが、不純物準位をバンド間に生じさせ、それが還元反応に重要な役割を果たしていることを明らかとした(牛山)。 電池活物質、蛍光体、磁性体、熱電材料など: LiFePO4電極表面を窒化することにより、新たな準位が生成して、電荷移動反応が促進されていること、リン酸を炭酸で置換することにより非平衡状態の中間相が広い組成領域で出現し、相の格子歪みを抑制する効果があることを明らかとした(内本)。Eu3+添加YSiO2Nでは同じ結晶構造を持つ酸化物と比較し、励起波長が50 nmレッドシフトするなど複合アニオン化合物に特有な光物性を見出した(田部)。ペロブスカイト型酸化物薄膜系の検討では、金属的なNdNiO3-絶縁性NdNiO3-xFx間の可逆的相転移などの新現象を発見した(長谷川)。H-置換により反強磁性絶縁体から強磁性金属に変化する複合アニオン強相関物質LaMnAsO1-xHxの電子状態を解析し、この材料が遍歴電子磁性体としての性質をもつことを明らかにするとともに、水素置換で強磁性が安定化することを理論計算で再現した(松石)。熱電材料の開発においては、複合アニオンホウ炭化物の熱電的性質の開発および新規な特性の発掘、領域内の他グループの酸窒化物などの複合アニオン化合物の熱電的性質の解明と開発を行い、成果の一部については論文発表を済ませた(森)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の通り、個々のグループでの研究が着実な進展を見せ、さらには新たな異分野間共同研究が複数立ち上がっている。新規光触媒TiO2:Ta/Nや電気化学材料LiFePO4:Nでは、従来の比較対象物質を超える性能が実現されており、複合アニオン化合物ならではの新機能が明かされつつある。このような現状を複合アニオン化合物の新規物理化学機能の創出というミッションに照らし合わせると、本計画研究は順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
H28年度の研究で見出したいくつかの成果は班内・班間重点研究課題に設定し、更なる研究の進展を図る。例えば、TiO2:Ta/N光触媒については内本Gと共同で水の酸化反応動作条件下での光触媒構造をoperando XAFS測定により明らかとする。また、垣花G(A01)や桑原G(A02)とも共同で合成法の改良・関連物質の探索、さらには第一原理計算を行うことで研究の飛躍的進展を狙う。複合アニオン化合物のCO2還元光触媒機能発現に不可欠な金属錯体については、Re錯体での研究例を参考に、具体的な反応機構を仮定して計算を進めていく。こうした研究を通して、ReとRuの違いを明らかにし、最終的には、触媒活性の更なる向上に向けた触媒デザインへと研究を展開する(牛山)。 物質研究の基礎となる材料探索は引き続き各グループで実施し、有望なものが発見され次第、共同研究に発展させていく。YSiO2Nについては、価電子帯が関与するホールトラップ機構による残光が期待され、長残光を発現させるためにPr3+やTb3+を添加させた蛍光体を作製する。作製した試料に対し熱ルミネセンス測定を行い、トラップの深さについての議論を行う(田部)。薄膜材料については、酸水素化物や酸硫化物を気相合成するためのプロセスを確立する。一方、トポタクティック手法では、酸水素化物、酸フッ化物、酸窒化物や酸塩素化物へと探索の手を広げる。物性面では、電子物性だけでなくイオン伝導性にも注目する(長谷川)。熱電材料に関しては、複合アニオン化合物の組成や結晶構造の制御を通した熱電性能の大幅な増強原理の発掘へ向けて研究を推進する(森)。酸水素化物については計算化学的検討により磁気状態の予測が可能となったことから、LaMnAsO1-xHxと同型で未合成の混合アニオン化合物の物性を予測しながら合成・物性測定を進める(松石)。
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