研究領域 | 生物合成系の再設計による複雑骨格機能分子の革新的創成科学 |
研究課題/領域番号 |
16H06444
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
菅 裕明 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (00361668)
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研究分担者 |
後藤 佑樹 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (70570604)
尾仲 宏康 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任教授 (80315829)
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研究期間 (年度) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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キーワード | 試験管内リデザイン生合成系 / 擬天然物 / 人工生合成系 / 主鎖修飾型ペプチド |
研究実績の概要 |
本研究課題では、生体内には存在し得ない人工生合成系を試験管内で構築すること、さらにこれらを用いて任意の生物活性をもつ天然物様化合物を創製することにより、新機軸の生物活性分子開発に資する『擬天然物合成生物学』の基盤を確立する。具体的には、改変翻訳系と異種由来のペプチド修飾酵素を複数組み合わせることで、各種主鎖修飾骨格を有する擬天然物ペプチドの試験管内リデザイン生合成系の創製を行う。さらに、この系を用いて、大規模な多様性(一兆種類以上)をもつ擬天然物のランダム配列ライブラリーを構築し、当該ライブラリーから新規生物活性擬天然物の探索系を構築することで医療に資する化合物の発見も視野に入れた研究を進める。昨年度の研究において、人工チオペプチド及びプレニル化トリプトファン含有人工ペプチドを生産可能な試験管内リデザイン生合成系をそれぞれ構築することに成功している。 今年度の研究では、チオペプチドの試験管内リデザイン生合成系について、非タンパク質性アミノ酸の利用が可能な我々独自の人工翻訳系を活かし、非タンパク質性アミノ酸を含む前駆体ペプチドを当該チオペプチド生合成酵素群が許容すること、またそれにより多彩な非タンパク質アミノ酸を併せ持つ人工チオペプチドを生産しうること、も実証することに成功した。さらに、通常のタンパク質性アミノ酸からなる前駆体ペプチドを用いた膨大な基質許容性調査実験も完了した。 一方、トリプトファンプレニル化酵素を組みこんだ試験管内リデザイン生合成系についても、詳細な基質許容性調査研究の結果、生産しうるプレニル化環状人工ペプチドのバリエーションを精細に同定することに成功した。以上の成果により、擬天然物ライブラリー構築及び生物活性擬天然物探索の基盤が整った。 さらに、トリプトファンプレニル化酵素のホモログタンパク質の中から、全く新奇の反応を触媒する新酵素を発見することにも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画通り、これまで研究で構築した各種試験管内リデザイン生合成系の実証実験と高度化をほぼ完了した。また、これらの生合成系を用いた擬天然物ペプチドのライブラリーの構築にも着手済みである。これにより、擬天然物ライブラリー構築、ひいては最終目標である生物活性擬天然物探索に向けた研究が着実に進捗している。 さらに、当初の計画では全く想定していなかった発見として、未知反応を触媒する新酵素も発見した。これにより、当初計画以上に、多種多様な骨格の擬天然物ペプチドを生産する幅広い生合成ツールを用意できる可能性がでてきた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により構築に成功した各種試験管内リデザイン生合成系について得た基質許容特性に関する知見を基に、擬天然物ペプチドライブラリーの構築を行う。また、これら擬天然物ペプチドライブラリーの試験管内選択系の構築/実証も実施する。さらに、2018年度に発見した新酵素の反応生成物の詳細を解明するとともに、新規構造を有する擬天然ペプチドライブラリーの構築と探索に応用可能かどうかの実験的調査もあわせて進める計画である。
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