計画研究
これまで異種遺伝子発現用に開発してきたStreptomyces avermitilisの汎用宿主は多くの異種二次代謝産物生合成遺伝子群の発現ならびにそれらの生産が効率的であることを確認してきた。効率良い物質生産は生合成遺伝子群の発現のみならず、前駆体として利用される1次代謝産物の供給との同調が極めて重要であることから、本汎用宿主の代謝フラックス解析の構築を行った。また、前駆体の主代謝経路として解糖系、ペントースリン酸系、およびTCA回路までの代謝系の必須遺伝子ではない遺伝子破壊株の網羅的な取得を試みている。代謝フラックス解析は13C-グルコースを取り込ませ、培養時間毎の菌体に取り込まれたタンパク質中のアミノ酸の炭素の取り込みから、代謝フラックスを解析した。Streptomycesでの代謝フラックスの結果は殆ど得られていないため、他のStreptomycesとの比較は不可能であるが、培養初期(対数増殖前期から後期)にかけては解糖系の代謝が60%以上であったのに対し、培養後期(対数増殖後期以降)はペントースリン酸系の代謝が50%以上で進んでいることが明らかとなった。一方、各種代謝系欠損株の取得に関しては多くのこれら代謝遺伝子がオペロンを形成していることから欠失させる遺伝子以降の転写を停止させない欠失株(in-frame deletion)の作製が必須であった。操作を簡便化するため欠失させる遺伝子の上流と下流の領域とloxPに夾まれた耐性遺伝子、ベクターをGibson's assembleの改良法によって効率良く破壊カセットの作製が完了させることができた。これまでに合計10遺伝子程度のin-frame deletion株を作製した。
2: おおむね順調に進展している
我々がこれまで開発した2次代謝産物生合成遺伝子群の異種発現のための汎用宿主Streptomyces avermitilisに関してその代謝フラックス解析系を構築することができた。Streptomycesでの代謝フラックスはほとんど報告がないことから、本菌での特異な代謝パターンが理解することができた。一方、主代謝経路の欠失株の作製を簡便に行う系を確立し、これまで10株程度の欠失株(in-frame deletion)を作製するに至った。この方法は単に代謝に関する遺伝子の欠失株を作製するだけでなく、他の遺伝子も、特にオペロンを形成している遺伝子群に対して、欠失させる遺伝子以降の転写を停止させずに作製することが容易に達成することができる。これらの技術は今後のゲノム編集にも適用可能と考えられる。
汎用宿主の代謝フラックス解析が可能となり、かつ主代謝系の欠失株が得られたことから、実際に異種生合成遺伝子群をこれらの欠失株に導入し、代謝産物の蓄積量が改善されたものについて代謝フラックス解析などを行っていく。また、欠失株に関しては単にsingle knockoutだけでなく、いくつかの多重欠失株での代謝産物生成ならびにフラックス解析を行って行きたい。2次代謝産物の中でもラクトン型ポリケチドとペプチド化合物はそれらの生物活性の多様性が極めて興味ある一群である。これらの生合成酵素は多機能酵素によって合成されるが、活性型の酵素は翻訳後修飾によってACP(or PCP)のSer残基にPptA酵素によってホスホパンテテイン残基が導入される。PptAは多くのorthologがあり、そのPptAがこれらの翻訳後修飾に関わっているかは不明である。汎用宿主でのin-frame欠失株は容易に作製出来るため、これらの酵素の遺伝子のsingle, double, triple, quadruple変異体を作製し、それぞれの修飾に関与する酵素の遺伝子を明らかにしていく。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (16件) (うち国際共著 2件、 査読あり 16件、 オープンアクセス 15件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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http://avermitilis.ls.kitasato-u.ac.jp