計画研究
Streptomyces avermitilis欠失株(SUKA株)から得た主経路欠失株のうち、ペントースリン酸経路のいくつかの欠失株で2次代謝産物の生成の変化が確認されたが最も変化が認められたのはグルコース6リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子の欠損がストレプトマイシンの生成を上昇させた。また、トランスケトラーゼの欠損はペントースリン酸経路から生成されるシキミ酸系の2次代謝産物、クロラムフェニコールとアクチノマイシンDの生成を有意に低下させた。一方、解糖系の経路のうちの6-ホスホフルクトースキナーゼの遺伝子は3つあるが、全てを欠失させることは不可能であった。これらの遺伝子のうちでpfkA1とpfkA3の2重欠失株ではクロラムフェニコールの生成が有意に上昇していた。pkfA1, 3二重破壊株の生育は元株と比べ低下していることが観察された。詳細に増殖過程を検討した結果、増殖速度が低下しており、さらに定常期における菌体量も減少していた。そこでspecific productionを乾燥菌体重量で比較したところ、元株に比べおよそ2倍のクロラムフェニコールの生成の上昇であることが明らかとなった。このことは解糖系を絞ったことによって一時増殖は沈滞したものの、生産期においてはペントースリン酸経路が旺盛に流れていることによって物質生産が増強されたものと結論された。I型PKS及びNRPSの翻訳後修飾に関与するpptA遺伝子の包括的な解析を行う系を作製することができた。一部、評価ができるようになっており、NRPS系に2次代謝産物として、アクチノマイシン、セファマイシンC、クロラムフェニコールおよびインジゴジンをI型PKSとしてピクロマイシンおよびネマデクチンの生成を評価できる系を構築した。
2: おおむね順調に進展している
一次代謝系、解糖系およびペントースリン酸系の欠失株の評価は、生産量の低い2次代謝産物ではその影響がでにくいため解析が困難になることがあるが、S. avermitilisの欠失株(SUKA株)では異種発現が良好なものが多いため、それぞれの欠失株での影響を捉えることが可能であった。I型PKSおよびNRPSのい翻訳語修飾に関しては、S. avermitilis SUKA株での異種2次代謝産物生合成遺伝子群の発現が良好であったために、当初の目的にあった、検討が可能であった。次年度は包括的な解析が期待できる。
I型PKSおよびNRPSの翻訳後修飾に関する包括的な解析は、解析系が完成したので今年度から詳細な検討を行い、S. avermitilis内のpptA1からA4までの4つ酵素の性状の確認、さらに異種I型PKSおよびNRPSの評価を行っていく。一方、解糖系のpfkA遺伝子欠損による物質生産の上昇に関しては、さらなる代謝フラックス解析を行い、物質生成における代謝バランスなどを解析していきたい。一方、Streptomyces属のゲノム情報から、本菌のグルコースの代謝に関与する経路は解糖系とペントースリン酸経路であり、Entner-Doudoroff経路は完全ではないと推察された。フラックス解析によってEntner-Doudoroff経路の有無を確認する。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 1件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 10件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (2件)
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