計画研究
S. avermitilisの1次代謝遺伝子欠失株のうちphosphofructokinase (pfkA)の2重破壊株(3遺伝子存在するが全ての欠失は致死であったため)はchloramphenicolの生成が有意に上昇した。pfkAの欠失はglycolysis(GLY)の流れを大幅に抑制し、pentose phosphate pathway(PTP)への代謝フラックスを上昇させたものと思われる。また、本菌の増殖期ではGLYの代謝が強いためpfkA欠失株では培養前期で増殖の低下が観察され、さらにchloramphenicolの生成の開始はコントロールの欠失していない株よりも遅くなった。その後のchloranphenicol生成はコントロールを上回った。これはGLYが抑制されているため、増殖に影響したが定常期ではPTPに基質が流れchloramphenicolの前駆体の供給が円滑に進んだためであると考察された。一方、2次代謝産物の中でI型PKSおよびNRPSは基本骨格のアシル側鎖あるいはペプチド側鎖を生成に関与しているが、これらの酵素はcarrier proteinドメイン部分を翻訳後修飾によってホスホパンテテイン化してはじめて触媒活性を有する酵素(holo型)として働く。生産菌にはこの修飾に関わる多くのorthologが存在するが、これらを我々が開発した、異種発現系を用いて包括的に解析を行った。S. avermitilisには4つのホスホパンテテイン転移酵素(PptA)を保有しており、それらうちの2つの遺伝子産物(SAV_1748およびSAV_2905)がI型PKSおよびNRPSの翻訳後修飾を行っている。またSAV_1748は検討したすべての異種I型PKSやNRPSをholo化することができた。
2: おおむね順調に進展している
Glycolysis(GLY)のpfkA欠失株に関しては今後、代謝フラックス解析を行い、glycolysisとpentophosphate pathway(PTP)との代謝のバランスを経時的に計測していく。Chloramphenicolの場合、骨格のほとんどをPTPから供給されているため、pfkA欠失の影響がchloramphenicol生成を左右していたが、他の二次代謝産物の場合、例えば、ペプチド化合物ではPTPだけでなくGLYやTCA回路上の代謝物を前駆体としている場合が多くある。これらの場合、代謝のrobust性で最終的な代謝産物への生成にまで影響することがあまりないように思われる。一方、I型PKSとNRPSの翻訳後修飾の包括的な解析は通常の酵素学的な方法が利用できないため、我々が開発した異種発現系は多いにこの解析に貢献したと言及できる。
2019年度は稀少な非天然型の2次代謝産物の生成を効率良く達成可能な方法を考案かつ実際の代謝産物生合成遺伝子群を用いて非天然型の2次代謝産物の効率良い生成方法を開発する。この研究においても効率良い、異種発現系は大変重要であり、我々がこれまでに構築してきた宿主やベクターなどを組み合わせ、この目的の達成を目指す。実際に多くの異種2次代謝産物の生合成遺伝子群は汎用されているS. lividansでは発現が弱いあるいは発現しないという現象が多々ある。異種発現ではいかなる遺伝子群が発現しするかあるいは発現しないかは導入して実際の培養を行うまで判らないので、今後とも我々が構築した異種遺伝子発現系で検討を行っていく。
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http://avermitilis.ls.kitasato-u.ac.jp