研究領域 | 生物合成系の再設計による複雑骨格機能分子の革新的創成科学 |
研究課題/領域番号 |
16H06451
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
江口 正 東京工業大学, 理学院, 教授 (60201365)
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研究期間 (年度) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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キーワード | 生合成 / 二次代謝 / 機能解析 |
研究実績の概要 |
本研究では、微生物二次代謝産物の生合成系の遺伝子情報の拡大に努めながら、多様な二次代謝産物の生合成系を遺伝子・酵素,反応レベルで精密に機能を解析し、これらの遺伝子情報を基盤とした生合成リデザインによる新物質生産への応用することを最終的な目的としている。本年度は、主にポリケチド合成酵素におけるタンパク質-タンパク質の相互作用解析を行った。 ポリケチド生合成においては、カルボン酸基質の運搬にアシルキャリアータンパク質 (ACP) がしばしば用いられる。ACPは80個程度のアミノ酸からなる小さなタンパク質であり、生物種によらず活性部位のセリン残基が翻訳後修飾によりホスホパンテテイニル化されている。そのホスホパンテテイン鎖の末端のチオール基がカルボン酸基質とチオエステル結合を形成してアシル化ACPとなり、カルボン酸基質が運搬される。アシル基転移酵素(AT)がカルボン酸基質を適切なACPへと受け渡すためには厳密な認識機構が存在するはずであるが、ATとACP間の相互作用は弱いため、複合体構造解析は難しく、これまでにACPの認識機構に関する詳細な知見は得られていなかった。そこで本年度、trans-ATだけによってポリケチド鎖を構築するジソラゾールにおけるATのACP認識機構を解明することにした。まず、結晶化に適した安定な複合体を得るため、ATとACP間クロスリンク反応を用いた手法で検討することにした。基質を模倣した不可逆的阻害剤をパンテテイン部を介してACPに結合させることにより、ATとACPをクロスリンクさせ、複合体を得、結晶化にも成功した。さらに複合体構造を分解能2.03オングストロームにて決定することに成功した。この複合体の結晶構造により、他のATとACPの間のタンパク質間相互作用を予測するためのモデル構造となり得ると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定であるマクロラクタム抗生物質やアミノグリコシド抗生物質の機能解析については、未だ論文としては仕上がっていないものの順調に進んでいる。さらに、抗生物質ホスホマイシンの生合成経路を明らかにするなど、他の抗生物質の生合成酵素の機能解析も進んでいる。これらを考えるとほぼ予定通りに研究計画が進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、マクロラクタムポリケチド抗生物質やアミノ配糖体抗生物質の生合成遺伝子の機能解析をさらに進めて、それらの基質特異性の解明へと進めていく予定である。それらの結果を基に新規類縁体創製を目指す。また、ポリケチド合成酵素におけるタンパク質間相互作用の解明は重要な課題で有り、相互作用解析をさらに進めていく予定である。さらに、他の抗生物質の生合成に関する酵素の機能解析を進めて、生合成リデザインによる非天然型抗生物質創製に向けて、研究を発展させる予定である。
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