計画研究
生物・生理活性を有し医薬品資源として有用な植物アルカロイドの生合成機構を解明し新たな物質生産に応用することを目的として次の研究を行った。まず、抗がん性モノテルペンインドールアルカロイドのカンプトテシンの生産種であるアカネ科植物チャボイナモリについて、統合オミクス解析の基盤となるゲノム配列の決定を行った。複数のNGS技術(Hiseq, PacBio, BioNano)により得られた配列データのハイブリッドアセンブリを行った。その結果、チャボイナモリの染色体数(n=11)の一致する11のscaffoldが得られ、染色体レベルでのゲノム情報を得ることに成功した。このゲノム情報をもとにこれまでに取得した7つの組織のRNA-seqデータをマッピングすることにより各遺伝子の発現情報を算出し、共発現解析、クラスタリング等を行い、生合成に関与する遺伝子の絞り込みのための基盤情報を整えた。またリジン由来アルカロイド生合成に関わる脱炭酸酵素について、ホソバルピナス由来のリジン/オルニチン脱炭酸酵素のX線構造解析情報に基づいて基質(Lysine)・生成物(Cadaverine)・補酵素PLPとの相互作用について計算化学を行い、タンパク質活性部位に位置するアミノ酸残基とそれぞれの機能を推定した。さらにこれらの相互作用が推定された残基について、点変異タンパク出を作出し、大腸菌で発現させた組換えタンパク質を用いてそれぞれの酵素活性を測定することにより、該当アミノ酸残基の反応機構における役割を推定した。また、基質特異性の決定に関わる残基の変異により基質特異性の変化した新規の機能を有する変異酵素を作出した。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究の計算化学において他グループとの共同研究による成果が得られ、論文発表にまで至った。これは当初の研究計画の時点では想定していなかった成果である。
チャボイナモリについて、得られたゲノム情報をもとに生合成遺伝子を絞り込む。さらにこれらについてチャボイナモリ毛状根におけるゲノム編集によるノックアウトを行い、代謝物変動から遺伝子機能を明らかにする。リジン/オルニチン脱炭酸酵素については詳細な反応速度論解析を行い、基質親和性などの詳細情報を得る。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 2件) 図書 (1件)
Nature Methods
巻: 16 ページ: 295~298
10.1038/s41592-019-0358-2
J. Nat. Med.
巻: 72 ページ: 867-881
10.1007/s11418-018-1218-6
J. Am. Chem. Soc.
巻: 140 ページ: 9743-9750
10.1021/jacs.8b06084
Planta Med
巻: 84 ページ: 920-934
10.1055/a-0630-5925
Plant Cell Physiol.
巻: 59 ページ: 1353-1362
10.1093/pcp/pcy069
PLoS ONE
巻: 13 ページ: e0198944
10.1371/journal.pone.0198944
Angew. Chem. Int. Ed.
巻: 57 ページ: 14752-14757
10.1002/anie.201807139