研究実績の概要 |
私たちはこれまで、細胞膜におけるリン脂質スクランブル機構を明らかにするために研究に取り組み、2種類の細胞膜スクランブラーゼ(TMEM16F,Xkr8)を同定してきた。それぞれ10つ、9つのメンバーから成るファミリーを形成しており、それらの幾つか(TMEM16: TMEM16C, TMEM16D, TMEM16E, TMEM16G, TMEM16J; Xkr: Xkr4, Xkr9)はスクランブラーゼ活性を有していることを見出した。本研究において私たちは、上述したスクランブラーゼの中で神経細胞に強く発現するXkr4に注目して解析を進めている。Xkr4の神経細胞における機能を明らかにするには、まず最初にXkr4の活性化機構を明らかにすることが重要であると考えこれまで研究を進めてきた。特に当該年度はXkr4の活性化機構を明らかにすることに注力し実験を行った。Xkr4はカスパーゼによる切断で活性化されるが、切断されたXkr4(Xkr4ΔC)を発現させても活性化しない。そこでまずは、代表者がこれまでに同定した2つの細胞膜上スクランブラーゼ(Xkr8, TMEM16F)を欠損した細胞を作製しこの細胞にXkr4ΔCを安定的に発現させた。その後、リン脂質スクランブラーゼ活性をホスファチジルセリン(PC)の取り込みで評価し、FACSを用いたソーティングにより自発的にPCを取り込む細胞を取得した。この過程を繰り返すことで結果的には、生きたままリン脂質をスクランブルする(PCを取り込む)変異細胞を樹立するこができた。この細胞のXkr4をCRISPR/Cas9 systemを用いてノックアウトするとスクランブラーゼ活性が消失したことからXkr4が恒常的に活性化した細胞を樹立することができた。
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