計画研究
【脱成熟現象で生じるスクラップ&ビルド機構の機序・機能解明のためのデータ取得】 我々は、Shn2欠損マウスが、統合失調症に関連した分子・神経・行動表現型を有することを示した 。同マウスは発達期のシナプス除去に関わるC1q ファミリー遺伝子の発現が上昇しており、スクラップ&ビルド現象による新旧のシナプス入出力のバランスが変化していると考えられる。しかしながら、詳細な形態変化の評価はなされていなかった。そこで、連続ブロック表面走査型電子顕微鏡 を用いてShn2欠損マウスの歯状回顆粒細胞における三次元微細構造解析を行った。Shn2欠損マウスでは、スパインの長さの上昇及びネックの直径の減少が観察されており、形態学的に未成熟であること示唆された (Mol. Brain 2017)。一方で、スパインの密度に関しては、変化は認められなかった。これらの結果は、シナプス貪食・成長に関わるC1q ファミリー分子、神経成長因子BDNF の発現がそれぞれ亢進しているために、見かけ上のスパインの密度は変化しないが、ターンオーバーが亢進していることを示唆している。より詳細な分子基盤及び行動レベルでの機能を明らかにするため、Shn2とC1qのダブルノックアウトマウスを繁殖中である。【脱成熟で生じるスクラップ&ビルド機構の神経回路・行動レベルでの機能の探索】脱成熟により生じる神経活動の変化を検討するため、未成熟歯状回を有するCaMKIIαヘテロ欠損マウスの歯状回におけるin vivo神経活動イメージングを進行中である。オープンフィールドテストにおける位置情報のデコーディング精度が野生型に比べて低いことを示唆するデータが得られつつある。加えて、光遺伝学的手法で部位・細胞種特異的 (前頭葉parvalbuminや陽性抑制性神経細胞)に脱成熟を誘導し行動レベルで何が生じるかを調べためのマウスを準備中である。
2: おおむね順調に進展している
【脱成熟現象で生じるスクラップ&ビルド機構の機序・機能解明のためのデータ取得】 スクラップ&ビルド現象による新旧のシナプス入出力のバランス変化について検討するため、連続ブロック表面走査型電子顕微鏡を用いてShn2欠損マウスの歯状回顆粒細胞における三次元微細構造解析を行った成果を学術論文として報告した (Mol. Brain 2017)。【脱成熟で生じるスクラップ&ビルド機構の神経回路・行動レベルでの機能の探索】脱成熟により生じるin vivoにおける神経活動の変化を検討するため、未成熟歯状回を有するCaMKIIαヘテロ欠損マウスの歯状回におけるin vivo神経活動イメージングの系を立ち上げた。応用にむけて、順調に準備を進めている。
脱成熟現象で生じるスクラップ&ビルド機構の機序・機能解明のため、脱成熟を制御したマウスの歯状回に対してRNA-seqを行い、その遺伝発現データを詳細に解析する。これにより、成熟度のステージが移行する際の遺伝子発現変化を捉え、そのコアの分子パスウェイを推定する。また、脱成熟で生じるスクラップ&ビルド機構の神経回路・行動レベルでの機能の探索のため、未成熟歯状回を有するマウスを用い、歯状回におけるin vivo神経活動イメージングや、三次元電子顕微鏡解析や免疫染色などを行う。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (26件) (うち国際学会 10件、 招待講演 3件)
Neuropsychopharmacology
巻: 43 ページ: 459~468
doi: 10.1038/npp.2017.167
Molecular Brain
巻: 10 ページ: 60
doi: 10.1186/s13041-017-0339-2
Scientific Reports
巻: 7 ページ: 44531~44531
doi: 10.1038/srep44531