研究領域 | スクラップ&ビルドによる脳機能の動的制御 |
研究課題/領域番号 |
16H06462
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
宮川 剛 藤田医科大学, 総合医科学研究所, 教授 (10301780)
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研究期間 (年度) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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キーワード | 海馬歯状回 / 脱成熟 / 超解像顕微鏡 |
研究実績の概要 |
脱成熟現象で生じるスクラップ&ビルド機構の分子機序解明を目的として、前年度までに、オプトジェネティクスを用いた脱成熟のモデルマウスのRNA-seq解析とそのデータのインフォマティクス解析により、脱成熟の発生、固定化、および再成熟にコアに関わる分子パスウェイを推定した。得られた結果に基づいて、候補の分子パスウェイを標的にしたin vivo遺伝子編集実験のためのツールの準備を行った。次年度はそのツールを用いたin vivo実験を行い、候補分子パスウェイと脱成熟現象との関連を検証する。さらに、前述のオプトジェネティクスを用いた脱成熟モデルマウスの解析において、ヒストンタンパク質の修飾レベルの変化が見られたため、ATAC-seqにより脱成熟に伴う遺伝子転写制御機構の変化を網羅的に探索する。本年度はATAC-seq解析のための条件検討を行った。例えば、解析対象とする脳領域が小さく、当初、組織から高品質かつ十分量のゲノムDNAを安定して得るのは困難であったが、精緻な条件検討により最適な条件を決定した。また脱成熟に伴うシナプスやスパインなどの形態変化の特定を目的として、Stimulated Emission Depletion(STED)顕微鏡を用いた微小構造解析を行う。今年度は、最適条件の探索を行い(ウイルスベクターを用いた解析対象の神経細胞のGFPでの最適な標識効率の検討や、脱成熟を起こした/起こしていない神経細胞の特定し、それぞれで観察するために、成熟度マーカータンパク質の発現とGFPとの二重染色の条件の検討など)、パイロット実験においてスパインの形態解析が可能な良好な結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の通り、ATAC-seq解析やSTED法による微小構造解析のための条件検討はほぼ完了するなど、概ね順調に進展している。モデルマウスの一部の系統において、繁殖不良により個体の供給が芳しくない状況があったが、解消されつつあり、次年度以降マウスの繁殖効率および実験効率を最大限にして研究を推進する。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに行った各種の条件検討の結果に基づき、脱成熟を示すモデルマウスにおいてATAC-seq解析やSTED法による微小構造解析を行う。さらに、脱成熟で生じるスクラップ&ビルド機構の神経回路・行動レベルでの機能の探索を目的として、マウスの行動試験遂行中の神経活動を、in vivo 神経活動モニタリングシステムを用いて検討する。これまで、内側前頭皮質では、血管走行などの構造上の問題から観察用のエンドマイクロスコープの設置が困難であったが、その手技的な問題はクリアできた。実際に脱成熟が生じたマウスでの観察を行う予定である。
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