計画研究
「鍵と鍵穴」の障壁を超え、交雑により生まれたハイブリッド新種は、農業において積極的に利用されている一方で、ハイブリッド新種が作成できたとして、その適応力は明らかではない。本研究では、この適応力を予測する手法の構築を目指し、交雑による新種の育種、大規模オミクス解析、形質予測につながる手法開発を実施している。本年度は、対象としているハクサンハタザオを含むシロイヌナズナ属を代表する27分類、94個体のゲノム情報を用いて解析を行ったところ、多くの多型が自然選択などによって共有されていることを報告し、その中で我々が開発した異質倍数体を解析するソフトウエアHomeoRoqが利用された [Nature Genetics]。また、異質倍数化によって親種が持つ形質が、異質倍数体にどのように引き継がれるのか、あるいは、引き継がれないかの分子基盤を明らかにするため、表現型として重金属耐性を選択し調査した。この形質は、ミヤマハタザオの親種であるハクサンハタザオ(重金属耐性に優れる)とセイヨウミヤマハタザオの間で異なるものである。これら三種の遺伝子発現をRNA-seqで取得し、HomeoRoqで解析することで、ミヤマハタザオの重金属耐性に関わる遺伝子の発現が、親種の発現の半分になっており、どちらの性質も持つジェネラリストであることが明らかになった[MBE]。また、来年度に向けてHomeoRoqの改良を実施、ミヤマハタザオの移植実験の実施、更に、移植実験等からの大規模なRNA-seqによる観測の実施を行い、来年度以降の研究につなげる成果が出た。
1: 当初の計画以上に進展している
当初計画では、本年は新種の作成とソフトウエアの改良がメインとなる予定であったが、本年はそれに加えて重金属耐性に関する解析結果や大規模な進化に関する結果をレポートすることができた。このため、当初計画以上に進展していると考えられる。
現在までに採取・保存されている300以上サンプルに対して、一部個体を選抜してRNA-seqを実施することで、新種の形成において重要な鍵と鍵穴の発見へとつなげる。また、異質倍数体遺伝子発現解析ソフトウエアであるHomeoRoqを、親種が一部不明な場合に関しても解析可能にすることで、対象となる異質倍数体の種を増やす。メチル化、ChIP-seq等への対応も準備する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 9件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 7件、 謝辞記載あり 8件)
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