研究実績の概要 |
植物の生殖過程では、「他の植物種と交雑することなく自らのゲノムの維持するシステム」が生殖障壁として機能している。このシステムは、受精に至る多段階に配置される「鍵と鍵穴」の分子認証の総体として捉えることができる。興味深いことに、受精前の分子認証を突破した場合でも、受精後の胚乳において、極めて鋭敏な異種ゲノムを感知する分子認証システムが配置されている。ここでは、両親ゲノムの塩基配列レベルの違いのみならず、可塑性の高いエピジェネティックな制御機構が重要な位置をしめていることを、我々は科研費を中心とした研究費支援により一連の分子機構を明らかにしてきた。本研究計画では、植物新種誕生原理の解明のため、(1)受精後の胚乳の生殖障壁をエピジェネティックに誘導するDNA脱メチル化の役割と(2)受精後の胚乳が自らを崩壊させることにより異種ゲノムを排除する機構を明らかにすることを目的とする。 本年度は、見いだした母親特異的なインプリント遺伝子であり、ポリコーム複合体の構成因子であるOsEMF2aの機能解析、変異体を用いたChIP-seq解析などを国内共同研究、国際共同研究にて行った。その結果、ポリコーム複合体の直接の標的抑制遺伝子候補として、胚乳発生に関与する多くの転写因子とインプリント遺伝子が浮かび上がってきた(Tonosaki K., et al. Plant Cell 2021)。
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