研究領域 | 脳構築における発生時計と場の連携 |
研究課題/領域番号 |
16H06483
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
花嶋 かりな 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 准教授 (80469915)
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研究分担者 |
高里 実 国立研究開発法人理化学研究所, 多細胞システム形成研究センター, チームリーダー (40788676)
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研究期間 (年度) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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キーワード | 大脳皮質 / 発生時間 / 神経幹細胞 / 細胞間相互作用 / 転写制御ネットワーク |
研究実績の概要 |
脳をつくる幹細胞は、各組織幹細胞の中でも時間に対する感受性が高いことが知られるが、発生時計がどこでコードされ、どのような細胞のふるまいに変換されるのかについては不明な点が多く残されている。我々はこれまでに、大脳皮質の主要なサブタイプでの産生タイミングを決定する発生時計のドミノ式制御因子としてFoxg1を同定し、その下流の遺伝子制御ネットワークを明らかにしてきた。本研究はこれら遺伝子ネットワークにより産生されるニューロンから神経幹細胞へ伝達されるフィードバックシグナルの分子実体を解明し、経時的に変化する場の情報がニューロンの動態にもたらす影響を明らかにすることで、発生時計の制御機構を解明するものである。 今年度はニューロン-幹細胞間シグナル伝達機構について、幹細胞から分化する娘細胞を生体内で標識し、分化ニューロン-神経幹細胞間のシグナルの伝達経路について解析を行った。この中でドミノ式制御因子Foxg1の下流で深層ニューロンから上層ニューロンへ分化能切り替え時期に変動する遺伝子としてPOU転写因子群を見出し、Brn2の核輸送を制御する上流の候補因子としてKPNA因子群について発現スクリーニングを行った結果、ニューロン-神経幹細胞間シグナルを介したKPNA2の制御がBrn2の細胞質から核への移行を誘導し、神経幹細胞の上層ニューロン分化を開始することが示唆された。並行してニューロンと神経幹細胞間の接触についてドミナントネガティブ型N-カドヘリンの導入による放射状グリアとの接触解除実験により、発生時計を制御するシグナル伝達の細胞間接触依存性を見出した。これらの細胞間シグナルを伝達する候補分子についてin vitro 培養による阻害実験を行なった結果、深層から上層ニューロンへの切り替えのタイミングと産生細胞数の比を規定するシグナル伝達経路が同定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者の転出に伴い、研究組織のメンバーと使用可能な設備・マウス系統・機器等に変更が生じた。また研究室の移設、機器の故障等により一部の実験に遅延が生じたが、その他の研究は概ね予定通りに進行し、発生時計を制御する分子機構について新たな知見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究結果をふまえ、今後は発生時計と場を連結させる分子機構を明らかにすることで幹細胞の時間制御の分子実体を解明する。特に発生時計の分子マシナリーについて、 発生時計の分子実体と普遍性を明らかにするため、ES細胞から分化誘導した大脳皮質神経幹細胞の3次元組織培養システム等を用い、ニューロンの経時的分化能と産生の切り替えタイミングを規定する分子の同定および発現操作により、大脳皮質ニューロンの時間的分化を制御する分子機構を明らかにする。また発生時計と場の相互作用による領野特異的細胞の動態について、同一時間に生み出される神経前駆細胞の動態をタイムラプスイメージングにより可視化し、神経前駆細胞から樹状突起発達までの過程を四次元的に解析し、これまで関連性が不明であった領野間の細胞の動態について明らかにする。
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