研究領域 | 脳構築における発生時計と場の連携 |
研究課題/領域番号 |
16H06487
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松田 知己 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (50419206)
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研究期間 (年度) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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キーワード | ライブイメージング / 蛍光タンパク質 / 化学発光 / 細胞動態 |
研究実績の概要 |
本研究では、場(細胞外環境)と神経細胞の連携という新たな視点で脳発生時間の制御機構を解明することを目的とした本領域の研究の発展に不可欠な、神経細胞のダイナミックな移動に伴う分子・細胞機能の変化を捉えるライブイメージングツールの開発を行なっている。 研究グループの着想に基づいたイメージングツールとして、昨年度より開発を行なっている蛍光と化学発光の双方の検出モードにおいてCa2+濃度変化を観測することのできるバイモーダルセンサーの性能評価を行なった。HeLa細胞および分散培養したラット海馬神経細胞に発現させ、いずれの検出モードにおいてもCa2+濃度変化を観測することができることを確認し、成果をまとめて論文発表した。 領域研究者同士の情報交換から着想を得たイメージングツールとして開発中のN-カドヘリンを介した細胞間相互作用を可視化するプローブについて、昨年度は二量体形成により蛍光発光するようになるβバレル型蛍光タンパク質のペア(ddGFP)を用いたプローブのプロトタイプを作製した。本年度は、N-カドヘリン中のddGFPの挿入位置やリンカー配列を変化させたプローブの遺伝子コンストラクトを作製し、培養細胞を用いたイメージングでの評価に基づく最適化を行い、細胞相互作用に伴う蛍光強度の増大の大きなプローブを得ることができた。さらに、計画班の仲嶋班と共同で、分散培養した神経細胞の相互作用部位で特異的な蛍光シグナルが出現することを確認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
蛍光と化学発光の双方の検出モードにおいてCa2+濃度変化を観測することのできるバイモーダルセンサーに関して、HeLa細胞に発現させてヒスタミン刺激によるCa2+濃度振動を双方の検出モードで観測することができることを確認した。さらに、分散培養したラット海馬神経細胞で、双方の検出モードで神経の自発発火に伴うCa2+濃度変化を観測できること、そして化学発光モードでは共発現させた光遺伝学ツールのチャネルロドプシンによるCa2+濃度の光操作と併用可能であることを確認し、それまでの結果をまとめて論文発表するに至った。N-カドヘリンを介した細胞間相互作用を可視化するプローブについては、昨年度作製したddGFPペアを用いたプロトタイプを元に、N-カドヘリン細胞外ドメイン上のddGFP挿入位置をシフトさせた変異体、リンカーを挿入した変異体を作製し、HEK293細胞に発現させて細胞接触界面での蛍光強度を指標に評価を行い、最適化を行なった。また、N-カドヘリン二量体結合界面のアミノ酸残基に変異導入すると蛍光が見られなくなったことから、相互作用特異的に蛍光検出できていることが確認できた。 以上は当初の計画と異なる点もあるが、おおむね順調と考えられる結果である。
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今後の研究の推進方策 |
N-カドヘリンを介した細胞間相互作用を可視化するプローブに関しては、神経細胞での評価を計画班仲嶋班と共同で、多細胞からなるオルガノイド内での2光子顕微鏡観察下の評価を計画班永樂班と共同で行う。さらに、相互作用の検出が可逆的に行うことができるかどうかを、キレート剤によりN-カドヘリンから相互作用に必須のCa2+を取り去った際のシグナル減衰によって評価する。 また、領域研究者同士の情報交換から着想を得た、脊椎動物の組織や器官の形形成で重要な役割を担っている細胞間の張力に関する情報を得るための、メカニカルストレス応答分子YAPのリン酸化状態を可視化するプローブの開発を行う。
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