本研究では、場(細胞外環境)と神経細胞の連携という新たな視点で脳発生時間の制御機構を解明することを目的とした本新学術領域研究の発展に不可欠な、神経細胞のダイナミックな移動に伴う分子・細胞機能の変化を捉えるライブイメージングツールの開発を行なった。 研究グループの着想に基づいて、化学発光Mg2+センサーを開発した。本センサーは、中心体タンパク質セントリン3のMg2+センシングドメインを黄色蛍光タンパク質Venusの円順列変異体と化学発光タンパク質NanoLucで挟んだドメイン構成で、Mg2+濃度上昇に伴って長波長にスペクトルシフトを起こす。本研究成果はSensors誌にて発表した。 領域研究者同士の情報交換から着想を得た開発として、計画班仲嶋班と共同でN-カドヘリンを介した細胞間相互作用を可視化するセンサーの開発を進めてきた。二量体形成により蛍光発光するβバレル型蛍光タンパク質のペア(ddGFP)を用いた本センサーのシグナル/バックグラウンド比は、蛍光タンパク質間のFRETを利用した既存のセンサーに比べて70倍程度大きいことを示した。また、計画班永樂班と共同で、多細胞からなるオルガノイド内での2光子顕微鏡観察下で、細胞間N-カドヘリン相互作用を可視化できることを示した。以上の研究成果は論文投稿済みで、査読コメントへの対応を行なっている段階にある。 N-カドヘリン相互作用センサー開発の経験を生かして、神経回路構築・シナプス形成に重要な役割を果たすプロトカドヘリンについて、同一神経細胞由来の神経突起間での相互作用の可視化を目指したFRETセンサーの開発を行い、Scientific Reports誌にて発表した。 さらに、メカニカルストレス応答分子YAPのリン酸化状態を可視化するプローブのプロトタイプを作製し、計画班影山班、公募班佐々木班に評価を依頼している。
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