計画研究
これまで、金属や薬剤など、ハプテンとして機能する分子においては、通常のペプチドに対するT細胞の認識とは異なった反応をとることが知られているが、その実態は不明である。本研究では、金属・薬剤のネオ・セルフ生成機構の解明として、5年間の計画研究において、金属などハプテンに特異的なT細胞受容体の情報をもとに、ハプテンによって修飾された抗原ペプチド- MHC複合体が、T細胞受容体にどのように認識されるかを明らかにすることを目指している。金属アレルギーは、T細胞依存性の疾患であるため、特異的T細胞受容体を決定するのに適した疾患である。今年度は、実験動物を用いて金属アレルギーを誘導して、金属特異的に反応するT細胞受容体を決定することを目的に研究を行った。歯科金属が生体金属材料として頻用されているために、歯科金属で使用されているパラジウムを金属として使用した。パラジウム溶液をマウスに免疫し、耳介あるいは足蹠に再度パラジウム溶液を接種することにより金属アレルギーを誘導した。マウスよりリンパ球を単離して、total RNAを抽出、cDNA合成を行った。T細胞受容体を特定するためには、PCR法での遺伝子増幅が必要である。しかし、遺伝子増幅の際にバイアス(偏り)がかかってしまうと、特異的T細胞受容体を特定できない可能性が高い。そこで、遺伝子を非バイアスで増幅する方法を開発してT細胞受容体の特定を試みた。この方法により、パラジウム特異的T細胞受容体の候補を絞り込むことができた。
2: おおむね順調に進展している
歯科金属として広く用いられているパラジウムに着目して、マウス金属アレルギーモデルを用い解析した。本年度は、リンパ球から、total RNAを抽出、cDNA合成後に、PCR増幅する際に、遺伝子を非バイアスで増幅する方法の開発に成功し、パラジウム特異的T細胞受容体の候補を絞り込むことができた。
非バイアスで遺伝子増幅できる方法の開発に成功したので、今年度は、この非バイアス遺伝子増幅法を用いて、パラジウム特異的T細胞受容体、α鎖、β鎖を特定する。アレルギーモデルマウスより、リンパ球を採取、total RNA抽出、cDNA合成して、非バイアス遺伝子増幅法を用いて、T細胞受容体を増幅し塩基配列を決定する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件)
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