研究領域 | ネオ・セルフの生成・機能・構造 |
研究課題/領域番号 |
16H06497
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小笠原 康悦 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (30323603)
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研究期間 (年度) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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キーワード | T細胞受容体 |
研究実績の概要 |
ハプテンとして機能する金属や薬剤などの分子においては、通常のペプチドに対するT細胞の認識とは異なった反応をとることが知られている。しかし、その実態は不明である。本研究では、金属・薬剤のネオ・セルフ生成機構を解明するため、金属などハプテンに特異的なT細胞受容体を解析して、その情報を集積する。そして、その情報をもとに、ハプテンによって修飾された抗原ペプチド- MHC複合体が、T細胞受容体にどのように認識されるかを明らかにすることを目指している。金属アレルギーは、T細胞依存性の疾患であるため、特異的T細胞受容体を決定するのに適した疾患と考えられる。 昨年度までにマウス金属アレルギーモデルで、MHC class Iが重要であること、そして、そのTCRの特定を行った。今年度は、遺伝子改変マウスを作成するなどして、マウス金属アレルギーモデルにおいてパラジウムに反応するTCRの解析を行った。パラジウム溶液をマウスに免疫し、耳介あるいは足蹠に再度パラジウム溶液を接種することにより金属アレルギーを誘導した。TCRα鎖のみの遺伝子導入マウスを用いて研究を遂行したが、予想通り、野生型に比べ強いアレルギーを引き起こすことができた。また、in vitro培養系において、既知のペプチド+MHCを認識する蛍光標識抗体を用いてフローサイトメトリーにて蛍光強度を測定したところ、金属溶液を加えることにより、この抗体の蛍光強度が減弱することを見い出した。今後、この実験系を用いて、ネオ・セルフの分子機構を追究していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、遺伝子改変マウスを作成するなどして、マウス金属アレルギーモデルにおいてパラジウムに反応するTCRの解析を行った。TCRα鎖遺伝子導入マウスを用いて解析したが、予想通り、野生型に比べ強いアレルギーを引き起こすことができた。このことは、前年度までに特定したTCRが真のTCRであったことを意味する。また、in vitro培養系において、既知のペプチドをMHC上に提示させる実験において、ペプチド+MHCを認識する蛍光標識抗体を用いてフローサイトメトリーにて蛍光強度を測定した。このIn vitro培養系に金属溶液を加える場合と加えない場合において、この抗体の蛍光強度が変化することを見い出した。この結果は、ネオ・セルフの分子機構の解明の糸口になり得る結果であり、今後の研究の良いモデルとなると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究を基盤にネオ・セルフとして提示されると考えられるハプテン修飾された、MHC+ペプチドについて、in vitro培養系を用いて免疫学的・生化学的研究を進めていく。具体的には、既知のペプチド+MHCを認識する蛍光標識抗体を用いてフローサイトメトリーにて蛍光強度を測定する実験系を発展させる。パラジウムなど金属溶液を加え、この抗体の蛍光強度が減弱することについて、ペプチドが変化しているのか、ペプチド+MHCの構造が変化しているのか、MHCが変化しているのかについて、詳細に研究を進める。また、MHCの型で場合分けをして、H-2KあるいはH-2DのどちらのMHCが金属イオンの影響を受けやすいのか、遺伝子改変マウスを用いるなどして研究を行う。 さらに、金属特異的TCRを培養細胞株に遺伝子導入したT細胞受容体遺伝子導入細胞株を作製する。この細胞株を用いてin vitro培養系において金属溶液を添加した状態で抗原提示細胞とともに培養して、T細胞受容体からのシグナルの有無を、IFNなどのサイトカインを指標に検証する。
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