計画研究
1. スギ花粉抗原Cry j-1由来ペプチドpCry j 1、HLA-DP5の複合体、それを認識する患者由来のT細胞受容体(TCR)の三者複合体試料を得るために、発現用プラスミドを設計・作製した。また結晶化に適した量と質の複合体試料を調製する条件を確立することに成功した。2. スギ花粉抗原Cry j-2由来ペプチドpCry j-2とHLA-DR53との複合体試料を調製するために、無細胞タンパク質合成系での発現用プラスミドを設計・作製した。3. グレーブス病の発症に関わる甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR)由来ペプチドpTSHRとHLA-DP5複合体とそれを認識するTCRとの三者複合体の立体構造解析のため、TSHRをカバーする80mer(20AAオーバーラップ)7種と45mer 1種のペプチドを合成し、HLA-DP5と結合しT細胞を活性化するペプチド領域を同定した。4. 初期計画「橋本病における同様の研究」の緊急性よりもスギ花粉抗原を認識する各種TCRの同定を優先させ、HLA-DP5陽性スギ花粉症患者からCryj-1 (9mer, 13mer, 15mer, 17mer, 23mer) ペプチドと反応するT細胞群を同定した。5. 上記3で得たHLA-DP5・ペプチド複合体を認識するT細胞をグレーブス病患者から同定した。これらのT細胞からのTCRクローニングと構造解析へ備えた。以上のように、HLA-DP5・pCry j 1複合体とHLA-DP5・pTSHR複合体を準備し、HLA-DP5を共有する2種類の「ネオ・セルフ」の構造およびTCRとの三者複合体の立体構造解明に向けた準備を進めた。HLA-DR53においても結合する外来ペプチド、自己由来ペプチドの同定を目指し、HLA-DR53を共有する2種類の「ネオ・セルフ」の構造およびTCRとの三者複合体の構造解析に備えた。
2: おおむね順調に進展している
1. HLA-DP5・pCry j 1複合体とTCRの結晶化スクリーニングを開始するところまで至っている。2. HLA-DR53・pCry j 2複合体の複合体試料の調製法の開発まで至っている。3. HLA-DP5陽性グレーブス病患者由来のT細胞を用いてTSHRタンパクからHLA-DP5と結合しT細胞を活性化するペプチド領域を複数同定し、これから合成20merペプチドを用いて目的の最小ペプチド同定を行っている。4. Cryj-1ペプチド(9mer, 13mer, 17mer, 23mer)と反応するT細胞からTCRをクローニングしTG40細胞に導入する作業をA01岸班との共同で開始した。
1. HLA-DP5・pCry j 1複合体、それを認識する患者由来のTCR細胞外領域の三者複合体の結晶化条件の精密化、X線回折実験を行い、結晶構造解析を進める。2. HLA-DR53・pCry j 2複合体の試料調製を行う。Cry j-2 由来ペプチドの中から、隣接領域を含めて、HLA-DR53と安定な複合体を形成するものを選択する。3. スギ花粉抗原ペプチドとTSHRペプチドが同じHLA-DP5と結合し、それぞれT細胞が活性化され胸腺での正と負の選択を受けて末梢に出現することから、それぞれのTCRとそのリガンドとの相互作用を構造学的に解明する。すでにHLA-DP5・pCry j 1複合体の立体構造は解明していることから、これとHLA-DP5・pTSHR複合体の立体構造を比較する。4. 橋本病患者のT細胞が反応するthyroglobulin(TG)由来のペプチドとHLA-DR53複合体、およびスギ花粉症患者のT細胞が反応するHLA-DR53・pCry j 2複合体の構造解析のためそれぞれのペプチドの同定を行う。HLA-DP5にCry j-1が結合しT細胞応答を惹起する「ネオ・セルフ」と、同じHLA-DP5に自己TSHR由来のペプチドが結合し、グレーブス病患者においてT細胞応答を惹起する「ネオ・セルフ」を準備し、HLA-DP5を共有する2種類の「ネオ・セルフ」の構造およびそれぞれを認識するTCRとの三者複合体の立体構造の比較解析により、胸腺における正・負の選択機構解明に資する。HLA-DR53においても、結合する外来ペプチド、自己由来ペプチドを同定し、HLA-DR53を共有する2種類の「ネオ・セルフ」の構造およびそれぞれを認識するTCRとの三者複合体の立体構造の比較解析により、胸腺における正・負の選択機構解明に資する。
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http://www.tokyo-med.ac.jp/neoself/index.html