(1)Ovablumin(OVA)抗原認識TCR OT-I Tgを用い、TCRとの親和性においてネオ・セルフ抗原の境界となるネガティブセレクターとポジティブセレクターの違い(Palmer線)が超分子活性化クラスターcSMAC形成として識別できることを、イメージングとリン酸化Erkとの相関を示すと共に、新たにNIHより供給されたOVA-Tetramerを用いた生化学的解析を行い確認した。E3ユビキチンリガーゼc-Cbl遺伝子欠損マウスを用いて、TCRの強度を変えた際のネオ・セルフの意味するPalmer線の移動を検証している。 (2)ヒト(h)CD19抗原に対するキメラ抗原受容体CARのイメージング解析から、抗原認識時に内在性TCRの他に共分子CD4とCD8の関与を示唆する結果が得られていたが、CD4は寄与しないこと、CD8は絶対的に重要であることが分かった。本結果はT細胞の胸腺分化においてもみられる現象であり、末梢T細胞のTCR刺激の実験においても、共受容体と下流のキナーゼLckとの会合はCD4で極一過性である一方CD8αでは継続的であり、胸腺でのT細胞ネオ・セルフ認識での共受容体の寄与とこれらが胸腺ネオ・セルフを決定するPalmer線決定の重要な要素であることを明らにした。 (3) hCD19 CARとhCD5 CARとを比較検討からhCD5 CARはPD-1抑制性マイクロクラスターと共局在されにくいこと、それに同期してPD-1抑制が効きにくく、これが抗PD-1抗体による疲弊解除が起きないことを明らかにした。その要因の多くはhCD5の細胞表面密度であることが分かり、つまり抗原提示細胞や標的細胞のこの場合のリガンドhCD5の発現量によりCARのシグナルの強弱が決定するCAR活性化ポイントのシフト=ネオ・セルフの変化がリガンドにより生じる可能性を提唱できた。
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