計画研究
特定のHLAアレルとの関連性が示されている疾患は100種以上に及ぶが、「なぜHLAと疾患が関連するのか?」という疑問は長年未解決のままである。本研究班では、NGSの革新的技術を駆使し、「ネオ・セルフ」に起因する疾患発症機序を明らかにすることに挑戦している。ネオ・セルフ形成に関わる先天的および後天的な遺伝要因をゲノム研究の観点から包括的に理解する類似研究はなく、本国がこの分野での主導権を握る上での急務の課題である。本年度では、健常者406検体を用いてHLA遺伝子全長の塩基配列を決定し、非同義置換を含む数多くの新規多型を検出した。封入体筋炎や抗PD-1抗体阻害薬関連筋炎について特定のHLAアレルとの関連性を明らかにした。骨髄移植ドナー161検体を用いたRNA発現量のアレル間比較を実施し、RNA発現量に基づく新たな分類体系を整備し、それに基づくRNA発現量と移植成績との関連性を精査することが可能になった。さらには、HLA領域における転写制御領域も含めた解析から詳細な遺伝子型-表現型の関連の構造を解明することを目指し、1細胞RNA-seqによるHLAアレルの発現解析、ナノポアシークエンサーを用いたHLAタイピングおよびHLAハプロタイプ構造解析の開発を進めた。具体的には、ナノポアシークエンサーからのロングリード情報から転写調節として個々のHLAアレルとそれぞれのシス転写制御領域の相を考慮した解析が可能となった。また、1細胞RNA-seqにより各HLA遺伝子のアレル特異的は発現バランスを1細胞ごとの異質性も考慮して検討することが可能となった。
2: おおむね順調に進展している
NGSによる疾患ゲノム解析の種々の手法を開発し、それらを活用しているため、概ね順調に進展していると言える。また、研究開始当初からの目的に変更は無く、大きな計画変更も無い。研究開始当初からの計画の一つであるネオ・セルフ現象を理解するための遺伝子解析手法開発として、RNA発現に影響を及ぼすDNA多型の特定が可能な実験系の構築、RNA発現に影響を及ぼす多型の特定、ロングリードによる遺伝子と転写調節領域を相として解析することでシス調節を明らかにする手法、および細胞間異質性も考慮した1細胞RNA-seqにより各HLA遺伝子のアレル間の発現バランスを細胞ごとに解析する手法を進めた。
HLA Expressionタイピング法の確立と疾患関連解析への応用前年度に引き続きRNA発現量の差異を規定する多型や変異の特定をHLA-C以外のHLA座にも展開させると共に前年度までのデータからHLA Expressionタイピングの開発を進める。これにより疾患解析や移植医療にて使用されているHLA DNAタイピングと統合することにより、多型とRNA発現を融合させた本研究班独自のHLAタイピング法を提唱したい。また、この方法を駆使しながらAMLやATLなどの白血病細胞や筋炎における遺伝子発現に重要な役割を担うネオ・セルフ生成の遺伝要因をHLA多型とRNA発現の両面から明らかにすることを目指す。遺伝子型-表現型関連構造からのネオ・セルフメカニズムの理解と病態制御計画:MHC-PheWASから明らかになった遺伝子型-表現型の関連の構造はどのように機能的し、なぜ疾患発症に至るのか、ゲノムDNA、RNAおよび転写制御メカニズムを明らかにするためのエピジェネティック解析を統合したオミックス解析手法により明らかにしたい。1細胞RNA-seqによりHLA遺伝子およびその関連分子の発現を1細胞レベルで解析し、細胞間の異質性も含めて解析することが可能となることから、今後、本手法を用いた解析で、ネオ・セルフに起因する疾患の発症機序を理解がさらに進むことが期待できる。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (17件) (うち国際共著 6件、 査読あり 17件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)
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