計画研究
特定のHLAアレルとの関連性が示されている疾患は100種以上に及ぶが、「なぜHLAと疾患が関連するのか?」という疑問は長年未解決のままである。本研究班では、NGSの革新的技術を駆使し、「ネオ・セルフ」に起因する疾患発症機序解明のための技術的解決を図ることに挑戦している。本年度では、免疫寛容を誘導する免疫チェックポイント分子として、妊娠免疫、臓器移植の際の免疫応答の抑制、腫瘍やウイルスの宿主免疫系からの逃避、自己免疫疾患などに関与するHLA-G遺伝子全長の多型解析を用いて実施し、812検体から50種類のアレル配列を同定した。壊死性ミオパチーや皮膚筋炎など6病型、計約800検体におけるHLAタイピングを実施し、自己抗体情報や病態情報を含めた筋炎の体系的な分類を進めている。HLA遺伝子のRNA発現レベルを包括的に、且つアレル毎に検出するCapture RNA-Seq法を161検体による検証実験を経て開発した。これに付随して腫瘍細胞におけるRNA発現レベルの変化を犬種つぃており、その原因となるHLA遺伝子の体細胞変異の同定を進めている。さらには、HLA領域における転写制御領域も含めた解析から詳細な遺伝子型-表現型の関連の構造を解明することを目指し、1細胞RNA-seqによるHLAアレルの発現解析、ナノポアシークエンサーを用いたHLAタイピングおよびHLAハプロタイプ構造解析、の手法開発を進めた。ナノポアシークエンサーからのロングリード情報から転写調節として個々のHLAアレルとそれぞれのシス転写制御領域の相を考慮した解析が可能となった。また、特定の細胞群に注目したシングルセルRNA-seqにより各HLA遺伝子のアレル特異的は発現バランスを1細胞ごとの異質性も考慮して検討することが可能となった。
2: おおむね順調に進展している
研究開始当初からの計画の一つであるネオ・セルフ現象を理解するための種々の遺伝子解析手法を開発し、臨床検体を用いた研究に移行しているため、概ね順調に進展していると言える。また、研究開始当初からの目的に変更は無く、大きな計画変更も無い。
HLA遺伝子のRNA発現レベルを包括的に、且つアレル毎に検出するCapture RNA-Seq法を本年度に開発したことから、今後はHLA多型とRNA発現の両面からAMLやATLなどの白血病や筋炎におけるネオ・セルフ生成の遺伝要因を明らかにすることを目指す。また、ゲノムコホート研究の健診にて収集した約300名のNK細胞にてKIR遺伝子群の発現パターンを精査し、分子間の相互作用を解明すると共に、これらの多型・発現パターンと既往歴、血液・生化学検査の情報との関連解析を実施する。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 2件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件)
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