研究領域 | 配位アシンメトリー:非対称配位圏設計と異方集積化が拓く新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
16H06510
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
秋根 茂久 金沢大学, 物質化学系, 教授 (30323265)
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研究期間 (年度) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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キーワード | キラリティー / らせん構造 / 動的構造変換 / 多核錯体 / 応答性分子 / ランタニド / ヘリシティー / 不斉誘起 |
研究実績の概要 |
本研究では、外部刺激に応答して「配位キラリティー」の変化や逆転が起こる動的変換錯体系の開発を目指し、各種刺激に応答した配位キラリティーの精密制御や刺激を与えてから配位キラリティーの発現・変換が起こるまでのレスポンス速度の精密設計を行うことを目標として研究を行った。 本年度は希土類金属イオンの半径の違いを利用したヘリシティーの精密制御について検討を行った。ランタニド(III)イオンは、互いに類似する性質をもつ3価のイオンであるが、原子番号の増大に伴ってイオン半径が連続的に小さくなっていく「ランタニド収縮」を示すことが知られている。キラル誘起部位として2-ヒドロキシプロピル基を導入した直鎖状トリス(salamo)配位子を亜鉛(II)イオンおよびランタニド(III)イオンと錯形成させてらせん型錯体を生成させた。CDスペクトルにヘリシティーの偏りを評価したところ、La→Luへとイオン半径が減少するに従って、SmまではCD強度が増加し、これよりイオン半径が小さいと強度は減少していった。イオン半径が大きいLa-Smについては、ランタニド収縮に伴ってらせんの巻きがきつくなり、ヘリシティー(右巻き/左巻きの偏り)も大きくなっていくが、イオン半径の小さいSm以降のランタニドでは、らせん構造が部分的にほどけた"partially coiled"構造が優勢となるためにCD強度が減少したと考えられる。このことは、溶液のNMRスペクトルから求めたジアステレオ比の変化からも確かめられた。このように、らせん型錯体の配位キラリティーを、ランタニド収縮を使って精密制御することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
らせん構造をもつ錯体の動的変換および精密制御について明らかにし、「配位キラリティーの」タイムプロファイル制御に関する研究を行うために必要な重要な基礎的知見が得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
一重らせん型錯体に加え、カゴ型三重らせん錯体や大環状キラル錯体についても合成し、これらの配位キラリティー制御およびタイムプロファイル制御について検討を行う。
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