研究実績の概要 |
本研究では、昨年度までに調製することに成功したシリカ表面に固定化したバナジウムアミノトリフェニレート錯体の表面配位構造の解析、メソポーラスシリカ上でのキラルバナジウム錯体の調製、反応特性についての検討を行った。アモルファスシリカ表面上への固定化では、表面での担持量の上限があることがわかり、固定化キラルV錯体の同定の鍵となる固体CDスペクトル強度が小さいことが分かった。このため、メソポーラスシリカMCM-41を担体として利用し、MCM-41細孔内に(R)/(S)-LNHAcキラル配位子を固定化し、V錯体を固定化することで、メソポーラスシリカ表面に固定化キラルバナジウム錯体を調製した。アモルファスシリカAerosil 300と比較して、キラルバナジウム錯体の固定化表面密度を減らし、重量当たりの固定化量を倍増させた固定化キラルバナジウム錯体を調製することに成功した。このメソポーラスシリカ固定化キラルバナジウム錯体の固体CDスペクトルの解析から、R体, S体共にメソポーラスシリカ表面でバナジウム錯体上にアシンメトリー構造が形成されていることを明らかにした。また、これらの固定化バナジウム錯体を用いた酸化反応特性を検討した。 また、新たな表面配位アシンメトリーの構築として、近大中井先生との共同研究で酸素応答性ランタニド錯体[{(MeMeArO)3tacn}Tb(THF)]錯体を用いた固定化キラルTb錯体の調製を検討し、キラルベンジルアルコール配位子を固定化したシリカ表面上にTb錯体を固定化した。固体CDスペクトル及び固体試料の円偏光発光(CPL)の測定を行い、シリカ表面のキラル配位サイトにTb錯体が配位することで、固体表面上で円偏光発光を示す固定化キラルTb錯体の調製に初めて成功した。
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