研究領域 | 配位アシンメトリー:非対称配位圏設計と異方集積化が拓く新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
16H06516
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
直田 健 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (20164113)
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研究分担者 |
川守田 創一郎 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (00708472)
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研究期間 (年度) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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キーワード | 超分子キラリティー / 固体発光 / リン光 / 白金錯体 |
研究実績の概要 |
本研究では、多様なd-π共役を有する発光プラットフォームと3次元構造を有し、分子会合や集合により発光能を発揮する新規潜在発光性錯体群の構築を目指している。特に、多様な面性キラリティーを有する金属3次元構造体を構築し、これらの有する固有の分子運動性および会合・集合能力と発光特性の関連性を精査する基礎研究を行うことによって、高機能性発光材料を指向した研究に取り組んでいる。 本年度の成果として、溶液で微発光性なビスイミノピラゾラート配位子を有する白金錯体において、対面型会合によって溶液が高濃度ほどりん光性が向上するという、高濃度ほど自己会合で失活する従来のほとんどすべてのりん光発光溶液系での濃度依存性とは異なる現象が起こることを明らかにした。 また、蛍光性ピレン部位を有するビス(イミノフェニルスルフィナト)白金錯体は、低濃度でエキシマー発光、高濃度でモノマー発光を与える、通常のピレン誘導体と逆の濃度依存性を示す。これらの異常現象は、3次元分子改変によって錯体に付与された特異な会合性と動的な分子運動性が鍵となって発現した。 さらに、ビス(サリチルアルジミナト)白金錯体の発光性に関する知見を深化させるべく、共同研究によってサリチルアルジミン配位子と白金錯体の量子化学計算により発光性における軌道相互作用の効果を詳細に解析し、発光性錯体設計の指針を確立できた。 これらの研究成果を中心に国内外で様々な学会にて成果を発表し、査読有りの国際論文へも投稿して研究成果を報告、または投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究は概ね順調に進んでいる。
昨年度に得られた知見により、柔軟性金属錯体のプラットフォームとして多く利用しているビス(サリチルアルジミナト)白金錯体において、金属錯体と配位子の相互作用がどのように発光性に寄与しているかが明らかになっている。 本年度はこのような基礎的な知見を実際の分子デザインに落とし込み、より機能が引き出せる分子を設計している。これにより、本年度は様々な柔軟性キラル錯体を合成した。
この成果は国内外での様々な学会発表にて報告しており、さらに国際雑誌への論文投稿によって研究成果としており、当初の計画が概ね進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方針として、様々な共同研究を利用して我々の設計している柔軟性金属錯体の機能を引き出すことを目指す。 水面に単分子膜として並べた金属錯体の集合状態制御に基づく発光コントロールを目指す。規制された分子充填空間にある非発光性分子に外部応力を加えることで発光を誘起できると考えており、例えば面性キラルな渡環型分子の結晶中で、配位プラットフォームの性質に応じてホモおよびヘテロキラル会合を任意に制御して作成することができる。構造規制によって折り曲げてd-π共役を減少させた結晶に加圧することで極限的分子過密状態を人工的に発生サせることで、配位面の強制平面化に伴うd-π共役強化による発光が期待される。さらに単分子膜として2次元配列させることで、失活要因を極小化させ高い発光性を付与する。単分子膜の発光性とその応力変動に関しては物質・材料研究機構の有賀研究室との共同研究を鋭意遂行予定である。 また、キラル液晶環境内で金属錯体の集合状態を制御する技術のさらなる応用や、アルキル鎖のC-H結合を直接官能基化してPt-C結合を有する白金錯体の合成など、本年度その端緒をつかんだ研究を発展させていく。
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