研究領域 | 配位アシンメトリー:非対称配位圏設計と異方集積化が拓く新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
16H06517
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
植村 卓史 京都大学, 工学研究科, 准教授 (50346079)
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研究期間 (年度) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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キーワード | MOF / 高分子 / 薄膜 |
研究実績の概要 |
ナノメートルレベルの膜厚を有する高分子薄膜体はそのバルク体とは異なった物性を示すことが知られており、長年にわたりその合成や解析に興味が持たれてきた。これまでに有機高分子超薄膜体の作製法としてスピンコート法やLangmuir-Blodget法、界面重合法など様々な方法が開発されてきたが、モノマー種に関わらず膜厚を精密に制御することは未だ非常にチャレンジングな課題である。本研究ではピラードレイヤー型のMOFである[Ni(Hbtc)(bpy)]n (1)の細孔内で架橋重合を行うことで、膜厚が単分子レベルに規制されたビニル高分子の超薄膜体合成を行った。 1を加熱脱気した後、その二次元状ナノ細孔内にスチレン(St)と架橋剤であるエチレングリコールジメタクリレート(EDMA)、ラジカル開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を加え、窒素雰囲気下で加熱することにより、細孔内で架橋ラジカル重合を行った。粉末X線構造回折から重合前後で1の結晶構造が保持されていることを確認した。重合後はHCl/MeOH溶液を加えることで錯体構造を壊し、重合体粒子を単離した。走査型顕微鏡測定から重合・単離の過程でMOF粒子の形態が保たれていることが明らかとなった。次に、単離された粒子をクロロホルム中に分散させることで架橋高分子薄膜の剥離を行った。すると0.8 nm程度の厚みを有する高分子超薄膜が得られていることが原子間力顕微鏡(AFM)測定から確認され、ポリスチレン(PSt)の単分子膜であることが示唆された。また本手法をメタクリル酸メチルとEDMAの組み合わせに対して適用した際にも同様に重合が進行し、AFM測定においても同程度の厚みを有する薄膜が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで合成が不可能とされてきた単一モノマー分の厚さを持つ高分子薄膜を合成できた。モノマーの種類もスチレンだけではなく、MMAや酢酸ビニルまでも可能になり、一般性が高い手法になることが分かったため、順調に研究が進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後はラジカル重合だけではなく他の重合法にも展開し、超薄膜高分子を合成する一般的な手法として確立していく。また、得られた高分子の物性に関しても検討し、一モノマー分の厚みしかないポリマーの力学特性などを検討してみる。
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