本研究の目的は主に下記の二点である 1)界面環境を用いて力学的に自在に分子機能をコントロールする方法論を確立すること 2)この方法論において分子の新たなアシンメトリー機能を開拓すること 機能分子科学の究極の姿である分子マシン、分子デバイスは、実質的な応用を真剣に考えるべき段階に来ている。例えば、生体系においては様々な生体マシンが連動して機能することによって高度な作用を産み出すことはしられており、人工的なマシン分子おいても同等な機能が発揮され、従来研究の延長上にない革新的な進展が機能分子科学にもたらされるべきである。単なる化学・物理の研究と生体系の違いは、後者ではキラリティーなどのアシンメトリー性(非対称性)が大きく強調され、異方的・特異的な機能が得られている点にある。当該年度は、固体界面であるフラーレンナノウィスカー配列基板上で、ヒト間葉系幹細胞を培養すると、細胞分野が抑えられた状態で細胞が増殖していくことを見出した(多能性の長期保持と再生能力が向上)。細胞が、表面構造と適度に相互作用することによって、適度な細胞収縮力が働き、Yes-associated proteinの核局在化によってこの効果がもたらされていることが見いだされた。分化していない幹細胞を大面積で増殖できる本技術も、in vitro幹細胞増殖や組織工学に寄与するものと期待できる。 本領域研究で、非対称環境の界面での配位を含む様々な相互作用を用いて分子マシンなどの様々な対象を制御してきたが、界面は生きた細胞の運命をも自在に制御しうる場であることが分かった。
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