研究領域 | 配位アシンメトリー:非対称配位圏設計と異方集積化が拓く新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
16H06519
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大場 正昭 九州大学, 理学研究院, 教授 (00284480)
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研究期間 (年度) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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キーワード | 多孔性金属錯体 / 超分子化学 / 表面・界面物性 |
研究実績の概要 |
本申請課題では、金属錯体を集積して目的に応じた機能空間を合理的に構築し、柔軟なアシンメトリック空間とゲスト分子の配列や相の変化を利用して、空間とゲスト分子のダイナミクスが連動する特異な機能・物性を探求する。本年度は、主に次の4つの項目について、研究を展開した。 (1) 非対称な錯体配位子、架橋配位子および補助配位子を用いたアシンメトリック多孔性金属錯体の合成:複数の新規非対称配位子および発光性架橋配位子の開発に成功した。また、反転対称性を消した正方錐型錯体配位子を用いた配位高分子においては、ゲスト分子の挿入による反転対称性の消失と発光波長と強度の制御に成功した。 (2)骨格構造の段階的修飾:ピラードレイヤー構造を有する化合物の配位不飽和な金属イオンまた、多孔性金属錯体 (DUT-8) の結晶を微細化すると、サイズによりゲスト吸着挙動が変わり、ナノ結晶ではゲストを吸着しない closed form となることを見出した。 (3) 多核環状錯体とポリ酸の複合化:複数の環状金属錯体を開発し、それらを用いて簡便な方法でポリ酸と多孔性イオン結晶を得ることに成功した。更に、異なるサイズのポリ酸を同一細孔構造内の異なる位置に配置することで、異方的な壁面構造を有する多孔性構造の構築に成功した。 (4) リン脂質界面における金属錯体薄膜形成:コレステロール誘導体または長鎖アルキルを配位子として導入した親脂質性金属錯体を開発し、2種類のリン脂質を用いたリポソームの脂質ドメインへの選択的な金属錯体の組込みに成功した。また、組み込んだ分子間の光励起エネルギー移動がドメインサイズと脂質膜中の分子配向に大きく依存することを、実験的に明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の各項目は、ほぼ予定通りに進展している。 (1) では、非対称架橋配位子に加えて、発光性の架橋配位子の開発にも成功したため、アシンメトリック多孔性構造における偏光発光特性の発現への展開を早めることができた。 (2) では、多孔性金属錯体固溶体における物性制御に加えて、ガス吸着能の結晶サイズによる ON/OFF 制御にも成功した。これも想定以上の進捗であり、粒子サイズ依存を軸とした研究展開も可能になった。 (3) では、環状金属錯体とポリ酸から多孔性イオン結晶を1段階反応で合成する簡便な手法の開発に成功した。細孔内壁に異なるポリ酸を合理的に配置することにも成功し、異方的な細孔構造とゲスト分子との相互作用の評価への展開が可能になった。 (4) では、2種類の親脂質性金属錯体を用いたリポソームの脂質ドメインへの選択的な金属錯体の組込みに成功した。ドメインを利用することで、脂質膜上で金属錯体を密に配置することが可能になった。また、組み込んだ分子間の光励起エネルギー移動の評価法およびその制御法を確立することで、今後の系統的な物性・機能研究の展開が可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果を基盤として、以下の4項目を引き続き推進し、空間アシンメトリーと構造変化、それに伴うゲスト分子の配列や相変化のダイナミクスの研究を展開する。。 (1) 非対称な錯体配位子、架橋配位子および補助配位子を用いたアシンメトリック多孔性金属錯体の合成:昨年度に開発した新規非対称配位子を用いて多孔性金属錯体を合成し、その機能・物性を評価する。特に、反転対称性を消した正方錐型錯体配位子と異方的な相互作用をするゲスト分子を用いた非対称性多孔性構造の誘導、および発光性のキラル錯体配位子を用いたキラル多孔性構造における偏光発光特性評価およびその制御を検討する。 (2)骨格構造の段階的修飾:昨年度に合成したピラードレイヤー構造を有する多孔性金属錯体固溶体の精密な対称性の制御を検討する。積層パターンをプログラムすることでシート構造間の対称性を制御して異方的な場を構築し、ゲスト分子との相互作用の制御、それに応じた物性の制御を検討する。また、ゲスト応答性に関しては、粒子サイズ効果も併せて検討する。 (3) 多核環状錯体とポリ酸の複合化:昨年度に開発した多孔性イオン結晶の合成法を利用し、更にポリ酸アニオンに配位子を導入して対称性を落とすことで、反転対称性が消失した多 孔性構造を誘導する。また、二酸化炭素およびメタンの吸着に焦点を絞り、これらの選択的吸着と変換反応の実現を目指して、構造並びにポリ酸の組み合わせを最適化する。 (4) リン脂質界面における金属錯体薄膜形成:リポソームの脂質ドメインに選択的に組込んだ金属錯体の更なる集積化、およびドメインサイズ制御による金属錯体の機能制御を検討する。また、イオンチャネルを用いた、リポソーム内水相における金属錯体の直接合成も進める。
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