計画研究
個性というバリエーションを考えるにあたり、遺伝的な差異に依らない、エピジェネティックな差異を考慮することは重要である。本研究グループは、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤であるバルプロ酸の暴露により、成体になってけいれん感受性が増大していること、そのメカニズム及び改善法を見出した。一方で本研究課題では、個性を生み出す基ともなりうる神経細胞(ニューロン)自体にも注目し、脳内免疫担当細胞ミクログリアをニューロンへと変化させる方法(ダイレクトリプログラミング))を開発した。本年度はこの方法を利用し、血管内閉塞法で作製した局所脳虚血(MCAO)モデルマウスにおいても梗塞巣でミクログリアを機能的な誘導ニューロン様(iN)細胞へと転換させることができるのか、さらに、その結果運動機能の改善がみられるかどうかを検討した。まず、虚血後7日までに梗塞中心部から周辺部にかけてミクログリアが浸潤・集積することを確認した。そこで虚血7日後の線条体の梗塞巣にCD68プロモーター制御下でNeuroD1を発現するレンチウイルスベクターを注入すると、その2週後にはニューロンマーカー陽性のiN細胞を、4週後にはiN細胞の活動電位やシナプス活動を認めた。CSF1受容体阻害薬投与により脳内からミクログリアを除去した場合には、これらのiN細胞の出現はほとんどみられなかったことから、分化転換された細胞の主体はミクログリアと推察された。さらに、iN細胞を補充したMCAOモデルマウスでは、ウイルス注入3週以降より神経機能回復を認め、8週後の線条体内のニューロン損失領域の縮小が観察された。以上の結果から、脳損傷部に集積する余剰なミクログリアから機能的なiN細胞への直接分化転換により、脳梗塞後の神経機能を改善できることがわかった。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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