計画研究
1.マウス精巣ゲノム、エピゲノム、遺伝子発現解析:加齢により野生型(C57BL/6J)のマウス精子に生じるエピゲノム修飾変化について、ターゲットメチローム解析を行いて同定した16ヶ所の高メチル化領域と96ヶ所の低メチル化領域に関して、GOオントロジー解析を行った。これらの低メチル化領域には、神経発生や神経機能に関するGOタームがエンリッチしていた。また、モチーフ解析により、DMRsの中でも低メチル化領域に共通する配列として、興味深い転写抑制因子の結合配列が見つかった。クロマチン沈降塩基配列解析(ChIP-seq)データベースChIP-Atlasを用いて、上記DMRsと有意に相関する転写因子結合配列解析を行った結果、マウスES細胞由来神経幹細胞を用いたChIP-seqデータにおいて、同じ転写抑制因子の結合配列が浮かび上がった。一方、次年度以降に行う準備として、高脂肪食投与の実験系をパイロット的に立上げ、条件検討を開始した。2.ヒト精子ゲノム、エピゲノム、遺伝子発現解析:学内倫理委員会の審査を経て、所定の手続きにより共同研究先のクリニックより供与されたヒト精子を用いて、ウェスタンブロットによるヒストン修飾因子の定量を行うための条件について検討した。3.仔マウス個別脳内遺伝子発現様態解析および脳画像解析:野生型雄マウスの加齢による仔マウスへの影響を解析するために、個体識別を行った仔マウスの脳構築について、各種分子マーカーを用いて組織学的検索の実験系を確立した。また、RNA-seqにより発生途中の前脳における網羅的な遺伝子発現プロファイルを取得した。4.仔マウス個別多種行動解析および脳生理機能解析:雄マウスの加齢による仔マウスへの影響について、個体識別を行った仔マウスについて、生後6日で解析可能な、母子分離超音波発声の解析について、詳細なシラブル解析を行う実験系を立ち上げた。
2: おおむね順調に進展している
①マウス精巣ゲノム、エピゲノム、遺伝子発現解析:加齢によりマウス精子に生じるエピゲノム修飾変化として得られた低メチル化領域に神経発生や神経機能に関するGOタームがエンリッチしていたことからこのような精子におけるエピゲノム変化が次世代の脳構築や神経機能に影響を与える可能性が示唆された。モチーフ解析およびChIP-Atlas解析により低メチル化領域の中に神経発生において重要な機能を有する興味深い転写抑制因子の結合配列が見つかったこともこれら低メチル化領域の重要性を強く示していると考えられる。また、次年度以降に行う準備として野生型マウスに対して高脂肪食を投与する実験系をパイロット的に立上げ条件検討を開始している。以上より②ヒト精子ゲノム、エピゲノム、遺伝子発現解析:所定の手続きにより得られたヒト精子を用いてウェスタンブロットによるヒストン修飾因子の定量を行った。加齢の影響を調べるためにはさらに多数の検体について解析する必要がある。③仔マウス個別脳内遺伝子発現様態解析および脳画像解析:雄マウスの加齢による仔マウスへの影響について各種分子マーカーを用いた組織学的検索により超音波発声コール数の低下が認められる生後6日時点の大脳皮質においてとくに深層ニューロンの産生数低下が伺われた。このことは父の加齢により仔マウス脳において発声に関わる長距離投射ニューロンの異常が生じる可能性を示していると考えられ非常に興味深い。また、RNA-seqを用いて発生途中の前脳における網羅的な遺伝子発現プロファイルを取得できたので続いて情報科学的な解析を行う準備が整った。④仔マウス個別多種行動解析および脳生理機能解析:雄マウスの加齢による仔マウスへの影響について個体識別を行った仔マウスについて生後6日で解析可能な母子分離超音波発声の解析を行い前報を参考に12種類のシラブルパターンに分類する方法を確立できた。
①マウス精巣ゲノム、エピゲノム、遺伝子発現解析:加齢により野生型(C57BL/6J)のマウス精子に生じたDMRsの意義に関して、さらに情報科学的な解析を行う。また、次年度は、野生型雄マウスに高脂肪食を投与し、その仔マウスの精子のエピゲノム修飾変化について解析を進める予定である。②ヒト精子ゲノム、エピゲノム、遺伝子発現解析:共同研究先のクリニックより、さらにヒト精子検体の供与を得て、ウェスタンブロットによるヒストン修飾因子の定量を続け、加齢の影響について解析を進める。③仔マウス個別脳内遺伝子発現様態解析および脳画像解析:野生型雄マウスの加齢による仔マウスへの影響を解析するために、個体識別を行った仔マウスの脳構築について、各種分子マーカーを用いて組織学的検索について、さらに個体数を増やして検討する。また、RNA-seqを用いて得られた発生途中の前脳における網羅的な遺伝子発現プロファイルについて、Gene Set Enrichment Analysis等の情報科学的な解析を進める。マウスを用いたMRI解析について条件検討を行うことを目指す。④仔マウス個別多種行動解析および脳生理機能解析:雄マウスの加齢による仔マウスへの影響について、個体識別を行った仔マウスについて、各種行動スコアの相関性について解析する。また、超音波発声についてはシラブル解析を進める。
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