計画研究
1.マウス精巣ゲノム、エピゲノム、遺伝子発現解析:平成28年度に同定した加齢マウス精子に生じるDNAメチル化変化領域(Differentially Methylated Regions, DMRs)について、胎仔期前脳における遺伝子発現(後述)との対応について、特異的な転写因子結合部位との関連を指標に絞込を行った。一方、高脂肪食投与の実験系をパイロット的に立上げ、野生型雄マウスへの高脂肪食投与による代謝系の変化について検討した。2.ヒト精子ゲノム、エピゲノム、遺伝子発現解析:学内倫理委員会の審査を経て、所定の手続きにより共同研究先のクリニックより供与されたヒト精子を用いて、ウェスタンブロットによるヒストン修飾因子の定量を行ったが、再現性について次年度確認する予定である。3.仔マウス個別脳内遺伝子発現様態解析および脳画像解析:個体識別を行った仔マウスの脳構築について、各種分子マーカーを用いて組織学的検索を行い、生後6日の時点で大脳皮質の層がとくに深層において薄いことを見出した。また、前年度に取得したRNA-seqデータに関してGene Set Enrichment Analysis(GSEA)を行ったところ、自閉症関連遺伝子群や、発生後期で発現が高い遺伝子群が加齢父由来胎仔脳で発現の高い遺伝子群にエンリッチしていることがわかった。さらに、加齢精子で見出されたものと同じ転写制御因子により発現制御を受けうる遺伝子群が浮かび上がった。4.仔マウス個別多種行動解析および脳生理機能解析:個体識別を行った仔マウスについて、生後6日で解析可能な、母子分離超音波発声の解析に関して詳細な解析を行ったところ、加齢雄に由来する仔マウスでは、コール数の平均値が劇的に低下するだけでなく、複雑なシラブルが有意に少なくなることがわかった。
2: おおむね順調に進展している
①マウス精巣ゲノム、エピゲノム、遺伝子発現解析:マウス加齢精子に生じた低メチル化領域に、神経発生や神経機能に関するGOタームがエンリッチしていたことから、このような精子におけるDNAメチル化変化が次世代の脳構築や神経機能に影響を与える可能性が示唆された。モチーフ解析およびChIP-Atlas解析により、低メチル化領域の中に神経発生において重要な機能を有する興味深い転写抑制因子の結合配列が見つかり、さらにRNA-seqデータのGSEAからも同じ転写抑制因子がエンリッチすることがわかったことから、これら低メチル化領域の重要性や脳構築過程における遺伝子発現制御への関与を強く示している可能性がある。したがって、本研究テーマは順調に進捗しているといえる。②ヒト精子ゲノム、エピゲノム、遺伝子発現解析:所定の手続きにより得られたヒト精子を用いてウェスタンブロットによるヒストン修飾因子の定量を行った。加齢の影響を調べるためには、さらに多数の検体について解析する必要がある。マウス精子におけるヒストン修飾因子の加齢による変化に関しては、共同研究者も独立に再現性を見出していることから、興味深い変化であることが伺われる。③仔マウス個別脳内遺伝子発現様態解析および脳画像解析:超音波発声コール数の低下が認められる生後6日時点の大脳皮質において、とくに深層ニューロンの産生数低下が伺われたことは、父加齢により仔マウス脳において、発声に関わる長距離投射ニューロンの異常が生じる可能性を示していると考えら、非常に興味深い。④仔マウス個別多種行動解析および脳生理機能解析:個体識別を行った仔マウスについて、生後6日で解析可能な、母子分離超音波発声の解析により、加齢雄に由来する仔マウスでは、集団としてコール数の平均値が劇的に低下するが、それは高頻度でコールする個体が減ったことによると考えられた。
①マウス精巣ゲノム、エピゲノム、遺伝子発現解析:加齢によりどのようにしてDMRsが生じるのかについて、精巣内精子形成過程におけるヒストン修飾分子の発現局在について解析を行う。②ヒト精子ゲノム、エピゲノム、遺伝子発現解析:共同研究先のクリニックより、さらにヒト精子検体の供与を得て、ウェスタンブロットによるヒストン修飾因子の定量を続け、加齢の影響について解析を進める。③仔マウス個別脳内遺伝子発現様態解析および脳画像解析:野生型雄マウスの加齢による仔マウスへの影響を解析するために、個体識別を行った仔マウスの脳構築について、成体期への影響が残るかどうかに関しても各種分子マーカーを用いて組織学的検索を行う。また、今年度までのRNA-seqデータは雄個体を用いて得られたものであるため、次年度は雌個体を用いた解析を進める。可能であれば、マウスを用いたMRI解析について条件検討を行う。④仔マウス個別多種行動解析および脳生理機能解析:雄マウスの加齢による仔マウスへの影響について、個体識別を行った仔マウスについて、各種行動スコアの相関性について解析する。また、超音波発声については、ソノグラム画像のdeep learning解析を行っている論文などを参考にしつつ詳細なシラブル解析を行う系を確立し、超音波発声の発達の様態についても解析を進める。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (33件) (うち国際学会 7件、 招待講演 17件) 図書 (2件) 備考 (1件)
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