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2017 年度 実績報告書

イメージングゲノミクス解析による個性創発機構の解明と細胞・脳の個性計測技術開発

計画研究

研究領域多様な「個性」を創発する脳システムの統合的理解
研究課題/領域番号 16H06531
研究機関大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター)

研究代表者

郷 康広  大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター), 新分野創成センター, 特任准教授 (50377123)

研究期間 (年度) 2016-06-30 – 2021-03-31
キーワード個性 / シングルセル / ゲノム / 細胞 / 脳 / 疾患モデル / 精神疾患
研究実績の概要

「個性」とは何か?どのように創発されるのか?それらの問題に対して,ゲノム科学と脳科学の学際的研究領域である認知ゲノミクス的アプローチをヒトに近縁な霊長類に対して用いることによって,脳とこころの「個性」創発メカニズムを分子のことばことはで実証的に理解することを目的とする.
「個性」創発の最も基盤となるゲノムの個体差の網羅的解析を,アカゲザルとマーモセットを用いて解析した.脳とこころの「個性」創発メカニズム解明に向けたアプローチのひとつとして,脳やこころが正常でない状態である精神疾患にある脳やその身体の状態を理解し.正常状態との比較を行う方法が考えられる.そこで,アカゲザルとマーモセットにおいて,ヒト精神疾患関連遺伝子の変異解析を行い,霊長類における精神疾患自然発症モデルの同定を行った.精神疾患に関与が強く疑われる約500遺伝子を解析対象とし,マカクザル831個体,マーモセット966個体を対象とした遺伝子機能喪失変異保有個体の同定を行った.その結果,マカクザルでは53遺伝子,マーモセットでは71遺伝子おいて稀な(集団頻度5%以下)遺伝子機能喪失変異を持つ個体を同定した.
また,細胞の個性を単一細胞ごとに高精度に計測するための実験系をたちあげ,マウスおよびマーモセット脳を対象とした,細胞の個性解析システムに関する実験を行った.新鮮な生細胞の入手が難しい場合(例えばヒトの死後脳など),細胞核を対象とした単一細胞核由来トランスクリプトーム解析系も開発し,細胞および細胞核由来の転写産物のプロファイルから,4種類の興奮性ニューロン,抑制性ニューロン,アストロサイト,オリゴデンドロサイト前駆細胞,成熟オリゴデンドロサイト,ミクログリア,上皮性細胞などの細胞種を同定することができた.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

霊長類(マカクザルおよびマーモセット)を対象とし,精神疾患に関与が強く疑われる約500遺伝子に対して遺伝子機能喪失変異保有個体の同定を行った結果,多くの興味深い遺伝子機能変異異常個体を同定した,また,そのうちのいくつかは形態学的,生理学的,行動学的な表現型と密接に関連する疾患を呈する個体であった.
細胞の個性を単一細胞ごとに高精度かつハイスループットに計測するための実験系を確立することができた.前年度に問題となっていた,脳神経系細胞,特に成体脳を対象とする場合に起きうるミエリン残渣などのデブリ除去に関しても,ソーティングや細胞のフィルターリングなどの実験プロトコルの最適化を行うことができた.また,生細胞の高効率な確保が難しい場合のプロトコルとして,細胞核内の転写産物の動態変化を適切に捉えることができる実験系を確立することが可能となった.

今後の研究の推進方策

ヒト精神・神経疾患病態解明のための霊長類モデル動物の開発にむけ,マカクザルおよびマーモセットにおける遺伝子機能喪失変異を持つ個体の同定を進めてきた.日本各地の飼育・繁殖施設との協力関係・ネットワークを構築することができた点は大変重要であった.その成果として,マカクザル1488頭,マーモセット1853頭のDNAおよびRNA試料を収集することが可能となった.特にマーモセットに関しては,日本の主な飼育施設の個体群を網羅しており,極めて貴重なバイオリソースである.解析においては,配列解析により得られるデータが,1個体につき10Gbyteを超えるため,解析処理のためのインフラを整えるとともに解析の並列化パイプラインの構築を行い,遺伝子機能喪失変異保有個体の同定を速やかに進めていく体制の構築が重要である.
マカクザル,マーモセットともにそれぞれ1000個体近くの遺伝子解析に目処がたち,数多くの精神・神経疾患関連遺伝子に遺伝子機能喪失変異をヘテロ接合で保有する個体が同定できた.今後,これまでの解析で明らかになった遺伝的情報を用いたモデル動物の作出を進める.具体的には,ヘテロ保有個体同士の人工授精などによる交配を行いホモ個体の作出を目指す.また,遺伝子機能喪失変異を保有する個体とその対照となる個体を用いた中間表現型解析の標準化も重要な課題である.有望な中間表現型として,VBMや拡散テンソル画像を用いた脳構造解析,安静時機能的MRIなどの脳機能解析,などが考えられる.すでに,生理学研究所,理化学研究所などとの共同研究として,高磁場MRI装置を用いたマカクザル,マーモセットにおける脳構造・機能解析の共同研究を開始している.
また,シングルセルトランスクリプトーム解析を含めた細胞の「個性」解析のための技術開発を進め,新学術領域班員への技術支援を積極的に行い,領域内連携研究をさらに推進する.

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2018 2017 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 7件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Digital gene atlas of neonate common marmoset brain2018

    • 著者名/発表者名
      Shimogori T, Abe A, Go Y, Hashikawa T, Kishi N, Kikuchi S, Kita Y, Niimi K, Nishibe H, Okuno M, Saga K, Sakurai M, Sato M, Serizawa T, Suzuki S, Takahashi E, Tanaka M, Tatsumoto S, Toki M, U M, Wang Y, Windak KJ, Yamagishi H, Yamashita K, Yoda T, Yoshida AC, Yoshida C, Yoshimoto T, Okano H
    • 雑誌名

      Neuroscience Research

      巻: 128 ページ: 1~13

    • DOI

      10.1016/j.neures.2017.10.009

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Direct estimation of de novo mutation rates in a chimpanzee parent-offspring trio by ultra-deep whole genome sequencing2017

    • 著者名/発表者名
      Tatsumoto Shoji, Go Yasuhiro, Fukuta Kentaro, Noguchi Hideki, Hayakawa Takashi, Tomonaga Masaki, Hirai Hirohisa, Matsuzawa Tetsuro, Agata Kiyokazu, Fujiyama Asao
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 7 ページ: 13561

    • DOI

      10.1038/s41598-017-13919-7

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Evolution of the sperm methylome of primates is associated with retrotransposon insertions and genome instability2017

    • 著者名/発表者名
      Fukuda Kei, Inoguchi Yukihiro, Ichiyanagi Kenji, Ichiyanagi Tomoko, Go Yasuhiro, Nagano Masashi, Yanagawa Yojiro, Takaesu Noboru, Ohkawa Yasuyuki, Imai Hiroo, Sasaki Hiroyuki
    • 雑誌名

      Human Molecular Genetics

      巻: 26 ページ: 3508~3519

    • DOI

      10.1093/hmg/ddx236

    • 査読あり
  • [学会発表] Cognitive Genomics in Primates2018

    • 著者名/発表者名
      Yasuhiro Go
    • 学会等名
      International symposium on Genomics and Cell Biology of Primates
    • 招待講演
  • [学会発表] 脳・こころの個性・多様性理解に向けた認知ゲノム研究2018

    • 著者名/発表者名
      郷康広
    • 学会等名
      自然科学研究機構 新分野創成センター合同シンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] 霊長類における精神・神経疾患関連遺伝子解析と認知ゲノミクスの展望2018

    • 著者名/発表者名
      郷康広
    • 学会等名
      京都大学霊長類研究所共同利用研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] 自閉症モデルマーモセット脳における時空間遺伝子発現解析2018

    • 著者名/発表者名
      郷康広、佐々木哲也、中垣慶子、小賀智文、辰本将司、石川裕恵、臼井千夏、一戸紀孝
    • 学会等名
      第7回日本マーモセット研究会
  • [学会発表] 霊長類脳における比較トランスクリプトーム・エピゲノム解析2017

    • 著者名/発表者名
      郷康広,辰本将司,Chuan Xu, Qian Li, Olga Efimova, Liu He, 大石高生,鵜殿俊史,山口勝司,重信秀治,柿田明美,那波宏之,Philipp Khaitovich
    • 学会等名
      2017年度生命科学系学会合同年次大会(ConBio2017)
  • [学会発表] ゲノムを通して我が身を知る:ヒト集団にみられる「個性」創発の起源に関する論考2017

    • 著者名/発表者名
      郷康広
    • 学会等名
      日本社会心理学会第58回大会
    • 招待講演
  • [学会発表] Spatiotemporal brain transcriptome architecture and application for disease model in marmosets2017

    • 著者名/発表者名
      郷康広
    • 学会等名
      第27回日本神経回路学会全国大会
    • 招待講演
  • [学会発表] Spatiotemporal brain transcriptome architecture and application for disease model in marmosets2017

    • 著者名/発表者名
      Yasuhiro Go
    • 学会等名
      第60回日本神経化学学会大会
    • 招待講演
  • [学会発表] ロングリード型NGSを用いたニホンザル新規ゲノム配列決定2017

    • 著者名/発表者名
      郷康広,辰本将司,石川裕恵
    • 学会等名
      第19回日本進化学会
  • [学会発表] ロングリード型NGSを用いたニホンザル新規ゲノム配列決定2017

    • 著者名/発表者名
      郷康広,辰本将司,石川裕恵
    • 学会等名
      NGS現場の会第5回研究会
  • [学会発表] ゲノムを通して我が身を知る:人とヒトとサルの間にあるもの2017

    • 著者名/発表者名
      郷康広
    • 学会等名
      愛知高等学校特別講演会
    • 招待講演
  • [備考] 【プレスリリース】チンパンジー親子トリオ(父親-母親-息子)の 全ゲノム配列を高精度で解明

    • URL

      http://www.nins.jp/cnsi/news/news_20171102.php

  • [備考] 研究室ホームページ

    • URL

      http://www.nips.ac.jp/coggen/

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公開日: 2018-12-17  

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