研究領域 | 多様な「個性」を創発する脳システムの統合的理解 |
研究課題/領域番号 |
16H06533
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
駒木 文保 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 教授 (70242039)
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研究期間 (年度) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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キーワード | ベイズ統計 / 点過程 / 時系列解析 / スパイクソーティング |
研究実績の概要 |
脳科学関連データの数理モデルに基づく統計解析手法を開発した.特に,海馬の神経細胞のスパイク列を点過程を用いてモデル化し,モデルに基づく統計解析手法を開発した.なお,点過程とは,地震や金融取引などのイベントの発生の時刻の列のモデル化に用いられる確率過程のクラスである.神経細胞のスパイクの発生をイベントととらえることにより,点過程モデルを用いたモデル化が可能になる. 従来の神経細胞のスパイク列の解析では,シリコンプローブを用いた複数の神経のスパイクによる電位の変化を同時に観測したものにスパイクソーティングと呼ばれる前処理を行うことにより,個々の神経細胞のスパイク列にして,それを解析する方法が主流であった.しかし,この前処理で間違いが入りこむことがあり,スパイクソーティングを用いないデータ解析手法の重要性が最近指摘されるようになり,いくつかの手法が提案されている. 本研究では,ラットの位置などの共変量の関数として神経細胞の発火の強度関数が変化することをモデル化し,さらにシリコンプローブの観測するスパイク列が複数個の神経細胞のスパイク列の重ね合わせであることを無限混合分布を用いてモデル化し,さらにノンパラメトリックベイズ法を用いることで,従来よりも精度よく脳内の情報を解読(ニューラルでコーディング)を行うことを可能にした.この手法は,ノンパラメトリックベイズ法を用いることにより,シリコンプローブの観測するニューロンの個数も自動的にデータから決定することができ,既存手法の問題点を解決するものとなっている.さらに,開発した数理モデルに基づく統計解析手法を用いて領域内での共同研究に着手している. また,昨年度に引き続き,複数の振動子の重ね合わせでデータが構成されていることを表現する統計数理モデルを用いて時系列データから自動的に振動成分を抽出する統計解析手法を用いた共同研究を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脳科学分野において,実データから知見を得るのに有用な数理モデルに基づく統計データ解析手法を研究をさらに進め,また,開発した手法を用いた共同研究を前年度以上に広げることができたため.
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今後の研究の推進方策 |
数理モデルに基づく統計解析手法のアプローチを生かした領域内での共同研究をさらに進めるとともに,連携の幅を広げることにより研究を推進する.
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