研究領域 | 生物ナビゲーションのシステム科学 |
研究課題/領域番号 |
16H06538
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
竹内 一郎 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40335146)
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研究分担者 |
打矢 隆弘 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10375157)
梶岡 慎輔 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40609517)
烏山 昌幸 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40628640)
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研究期間 (年度) |
2016-06-30 – 2021-03-31
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キーワード | 機械学習 / 系列マイニング / 動物行動学 / 変化点検出 |
研究実績の概要 |
本研究の目的はヒトを含む様々な動物種の様々な移動行動の分析に汎用的に利用できるデータ分析法を確立することである.近年,センサの発達により,ヒトや動物の移動行動を詳細に計測できるようになっており,これらのデータを活用してヒトや動物の行動分析を行うことは様々な分野において有用である.本研究では,移動行動データから知識を抽出する方法を開発するだけでなく,抽出した知識の信頼性を統計的に定量化することに重点を置く.移動行動データのうち,移動の経路データを扱う問題は経路データ分析(trajectory data analysis)と呼ばれている.経路データ分析分野では,経路データの分類,クラスタリング,セグメンテーション,変化点検出,特徴点検出などのさまざまな課題があり,様々なアルゴリズムが提案されている.しかしながら,これらのアルゴリズムは複雑な計算に基づいており,従来の統計的推測の枠組で信頼性評価を行うことは困難である.そこで,本研究では近年着目を集めている選択的推論と呼ばれる枠組を利用することで,この困難を克服するものである.2019年度は移動系列の変化点を検出し、その統計的有意性を評価するための理論、アルゴリズム、ソフトウェアを開発した。変化点検出は様々な分野に現れる基本的なデータ分析であるが、検出された変化点の統計的信頼性評価を正確に行うことは困難であった。これは、変化点がデータに基づいて選択されるためで、正確な信頼性評価を行うためには選択バイアスを補正する必要があるためである。本研究ではSelective Inferenceと呼ばれる新たな統計解析理論を変化点検出に活用することで、これまで困難であった変化点の統計的有意性評価が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は主に移動系列の変化点検出とその統計的信頼性評価法にとりくんだ.この課題はヒトを含む動物の軌跡がGPSデータなどの形式で与えられたとき、軌跡の特徴が変化する点を求める問題として定式化される変化点の統計的信頼性評価は変化点がデータに基づいて選択されるため、選択バイアスの補正が必要という点で困難である。本研究ではSelective Inferenceと呼ばれる新たな統計理論を活用することでこの困難を克服した.Selective Inferenceは近年重要性が指摘されているAIの信頼性評価の有望な技術の一つとして注目されているものであるが、本研究ではこれを初めて移動軌跡の変化点検出とその信頼性評価に利用するものである。本研究では提案法の理論解析,アルゴリズム開発,ソフトウェア実装を行った.開発した方法をヒト、自動車、海鳥の移動軌跡に適用したところ,適切な変化点の選択を行われることを実証できた。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は主に多次元系列の変化点検出とその信頼性評価法の構築にとりくむ予定である.この課題は2019年の単一系列からの変化点検出の拡張として位置づけられる。例えば、本手法は移動軌跡に加えてヒトや動物に関する追加的な系列情報が計測されたとき、複数の系列のなかで変化が生じた系列を同定する際に利用できる。また、別の応用として、複数の移動個体から得られた複数の移動系列に対して、一部の個体に共通してみられる変化点を検出するのにも役立つと思われる。この課題はどの系列に変化点があるかをデータに基づいて選択するため、変化点の選択に加えて系列の選択のバイアスが加わり、その補正が必要となる。2019年度と同じく、Selective Inferenceと呼ばれる新たな統計分析法をこの問題に適用することでこの問題を解決する。本研究では提案法の理論解析,アルゴリズム開発,ソフトウェア実装を行う.開発した方法を複数個体の移動系列データ適用し,従来のアプローチと比較を行う.提案法のヒトや自動車の移動データ分析への適用可能性も検討する。
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