ドメイン敵対的学習を用いた種横断型軌跡分析手法に関する論文を執筆し、Nature Communicationsに採録された。本研究では、異なる種の移動行動データを統合的に分析できる人工知能技術を開発し、人、マウス、昆虫、線虫などの進化系統的に大きくかけ離れた動物のドーパミンが欠乏した個体に共通して現れる行動特徴を発見した。人やマウス、線虫などの異なる種の動物は、体長や移動方法も大きく異なるため、それらの移動行動データを直接比較して分析することは困難だった。そこで、動物の移動軌跡から種の判別は不可能だが、正常か病気(ドーパミン欠乏)の個体かを判別可能な行動特徴を抽出するニューラルネットワークを開発した。種を見分けることができないが、病気を見分けることができる特徴は、種に共通する病気の特徴と言える。提案した手法を、人、マウス、昆虫(米の害虫であるコクヌストモドキ)、線虫のドーパミンが欠乏している個体および正常個体の移動行動データに適用し、種横断的に見られる移動特徴を発見した。ドーパミンが欠乏した人、マウス、線虫には、速い速度を保って移動できない、加速するときに速度が安定しないといった運動障害が共通して見られた。また、ドーパミンが欠乏したマウス、線虫、昆虫には、曲がる前にスムーズに速度を落とせないといった運動障害が共通して見られた。 また、海鳥の移動行動から得られたマルチモーダルセンサデータから、センサモーダル間の頻出する共起モードを抽出する手法を開発し、Animal Biotelemetryに採録された。 海鳥用の動物装着型データロガーを、新潟県粟島に生息するオオミズナギドリに適用した。 水深センサを用いてオオミズナギドリの採餌行動を自動検知し、対象行動の映像を自動記録した。実験結果の論文化に必要な量のデータは収集できなかったため、今後の課題とする。
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