渡りや母川回帰など、動物が自然界で行う驚異的なナビゲーション機能は、ラットやマウスなどの実験動物で調べることは難しい。そこで、ナビゲーション研究用モデル動物として海鳥とサケ科魚類を選定し、B01依田と共同することで、生態学と神経科学との世界的にも類を見ない異分野融合研究を実施してきた。本年度は、これまでに計測されたデータを解析し、研究成果を取りまとめた。オオミズナギドリの雛の嗅内皮質に相当する終脳背内側後部に電極を留置し、無線神経活動ロガーを活用して計測したデータから、哺乳類以外では世界初となるグリッド細胞を発見した。げっ歯類の場所細胞と比較検討することで、本領域が推し進めるナビ理解の促進に寄与する成果となる。加えて、マスの終脳の背内側部から記録された神経細胞活動データを解析し、頭方位細胞を発見した。その成果としては、計測手法に関する方法論論文を国際学術誌Animal Biotelemetryにて報告した。海鳥と同様に、げっ歯類の頭方位細胞と比較検討することで、本領域が推し進めるナビ理解の促進に寄与する成果となる。 A02前川が推し進めた深層学習法DeepHLの開発に寄与し、DeepHLを活用することで、ナビゲーション移動行動を解析し、その結果、運動障害を特定することが可能な特徴的な移動行動が、ある一定時間の最大移動距離に現れることを発見することができた。従来は、移動速度や滞留時間に着目していたため、DeepHLを活用することで新規な移動状態を発見することができたと考えられる。このデータ科学と神経科学の異分野融合研究の成果は、A02前川が中心となり、A02前川と計画班、公募班との研究成果を交えて国際学術雑誌Nature Communicationsにて報告した。
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